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710・砂糖の輸入業者。

 戦前の商売は順調だった。

南の国から砂糖を輸入して売るだけの簡単と言えば簡単な仕事だった。

甘味料は蜂蜜や水あめが主流で砂糖は贅沢品だ。

なにしろ産地が南の国しか無かったから。

大抵は貴族様がお買い上げ下さっていた。

でも戦争が始まったら……


お手元不如意な貴族様が増えたら当然贅沢品な砂糖は買い控えられてしまった。

国の経済が元に戻るのはいつになるのだろうか? 

落ちた売り上げをなんとかしたい。

でもそれは簡単なことではなかった。


オマケに北の領地で砂糖の採れる蕪が見つかったと! 

多少の色が付いていたとしても砂糖は砂糖だ。

輸入物の砂糖の売り上げが落ちているというのに……


追い詰められた気分に同業者一同頭を抱えた。

国産砂糖の製作者は宰相家の関係者だという。

圧力をかけることも苦情を言うことも出来ない。

貴族様にすら対抗できないのに宰相家となったら……


ところがその方は我々を排除したいとかイジメたいとかは思っていなかった。

普通の砂糖だけだった我々に新しい種類の砂糖を教えてくださった。

グラニュー糖は聞いたことがあったが角砂糖とか粉砂糖とかアイシングとか

もう眩暈めまいがしてきたのは私だけじゃあなかったね。


アイシングの花が付いた角砂糖はメチャクチャ評判になった。

西の国にまで売れたのには驚いた。

小競り合いがあってもあの国は貴族様がゾロゾロだ。

経済的にもこの国よりずっと豊かなのでこういうものは余裕で買えるらしい。


西の国の貴族様方が角砂糖に慣れた頃また新商品のヒントを宰相家の方が

教えてくださった。

色を付けていろんな形に固めた砂糖! 


「形も色もお客さんの好みのモノを受注生産してもいいですね。

特注が好きな貴族も多いでしょうから。

他の国に売れるならこの国の利益になります。

戦争で国も民間もお金が足りません。

輸出ができるとは思ってなかったですけど頑張ってください。

あなた方だけでなくこの国のためになると思いますからね」


国のため……なんてことは考えたことも無かった。

親のやっていた商売を引き継いだだけだったから。

そうか、輸入は国から金が出ていくけど輸出は金が入ってくるってことか! 

足りなくなった国の金を他の国から持ってくることができるんだな。


砂糖を輸入して国内で売るだけだった。

でも角砂糖やいろんな形の砂糖が輸出できるなら俺達でも国を良くできる。

商売が国のためになるなんてなぁ。


それにしてもこの宰相家の方はまだ幼い子にしか見えない。

なのにギルドの職員が張り付いているなんて……

なにかオレ達の知らない秘密があるのかもしれない。

……でも、あんまり追及しないほうが良いかもな。

ギルドと宰相家……どっちも対抗できるわけないもんな。

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