709・色。
「リモの子供達」を館の皆に試食して貰ったので味は合格となった。
料理長はレモンもどきなのが気に入ったようでしっかり確保されてしまった。
レモネード用にもう少しオレの分が欲しかったんだけど。
「醸造酢とはまた違って良いですね。
香りも他の食材の邪魔をしないしなんと言ってもフレッシュなのが最高です。
さっき王太后様にもお出ししたんですがお褒めの言葉が来ましたよ」
げぇっ! いつの間にいらしてたんだ?
キッチンに居たから気が付かなかったよ。
……ということは呼び出しが来るよな……絶対!
おばあさまが「リモ」のことをバラさない訳がないもんなぁ。
ということで情報開示となりましたぁ。
笑いながら圧を掛けてこないで下さい!
いくら一番好きでも試食も分析もまだまだなのに献上なんてできませんって!
「色々言いたいことが無いわけじゃあないけどまあいいわ。
分かってることだけでも教えてくれるんでしょう?
美味しいことはわかったけどね」
この方はホントに新し物好きな方だ。
オレが商業ギルドにアイディア提供したモノは片っ端から全部説明を求めてくる。
質問も鋭いから油断出来ない。
こういうのが政治の方で力を発揮されていた理由の一つなんだろうな。
なんだか当時の王宮の方々が気の毒な気がしてきたよ。
「こんな大きな果物は初めて見たわ。
しかも元がこんなに小さな実だなんてお前の木魔法ってとんでもないわね。
その品種改良って他の作物でもできるのかしら?」
あー……もうやってます。
北部の領地で耐寒性のある麦とか収量の多いセタルとかですけどね。
木魔法や温室じゃあなく普通に栽培ができるかどうか試験中のものが多いですよ。
あ! 砂糖の採れる蕪はなんとか収穫が始まりました。
まだ大量とは行かないんですが。
「ソレは私も聞いてるわ。
砂糖の輸入業者が文句を言わないのが不思議だったのよ。
でも色々対策してたのは褒めてあげましょう。
お花の載った角砂糖は可愛らしかったから」
前世には角砂糖の上に砂糖で出来たアイシングの花が載った品があった。
紅茶に入れると上の花だけが浮いてくるからちょっと楽しい物だったよ。
最近はあまり見かけないけど粉砂糖と卵白と着色料で出来てるアイシング
なので自作する人も居るようだけどね。
女性には「可愛い、綺麗」は購入動機としては大きいと思う。
タダの角砂糖の方も珍しがられてるみたいだね。
「珍しくて可愛らしい物には確かにひかれるわね。
お砂糖が四角いってだけでなんだかちょっとワクワクしたもの」
四角いだけじゃあなくいろんな色や形の砂糖がありましたよ。
花だけじゃあありません。動物、魚、果物、その他なんでも出来ますから……
「ふぅ~ん、なんで今まで黙ってたのかしら?
商業ギルドも喜ぶアイディアでしょうに……」
だってお砂糖は高いし輸入でしか手に入らなかったんだ。
贅沢な品はこういう時には強制されなくても購入を控えられてしまう。
輸入となれば国からお金が出ていく事にもなるし。
でも多少の色が付いているとはいえ国産品が出来たから安く砂糖が使えるんだ。
色は別の食用色素を使えば誤魔化せるからね。
そういえば漫画雑誌はページに薄い地色が付いていた。
ピンクや青、黄色なんかがね。
再生紙で出来ているのでどうしても元のインクの黒ずみとかが残ることもある。
なので色を付けて目立たなくしてたんだ。
前世のことを全部開示するのは得策では無いと思う。
同じ物がココでも通用するかはやってみないと分からないし。
全部一遍にってのも考えものだと思うんだよ。
国産砂糖の生産量もまだまだ大した量じゃあないことだしね。