700・自給自足と増産。
カール君が商業ギルドから報告書を持ってきた。
何かと思えば「耕耘機」のことだった。
南部の村々にレンタルで配置してきたけどそれが完了したという。
まあ、一台づつなんだけどね。
これで完了! かと思ったら戦場にならなかった他の地方の村にも配置して欲しい
という要望が来ているんだそうだ。
国中から馬をかき集めて戦争に使ったものだからアチコチに馬の居ない村が増えた
らしい。
馬の居る村でも老馬だったりして戦争前のように畑を耕すのは大変だそうだ。
ということで「耕耘機」の生産は継続することになった。
どこから先に配置するかはギルマス達に決めて貰う。
まあ、くじ引きでもジャンケンでも文句は言いませんよ。
「村中総出で魔力を込めてやっと動く代物ですが馬がやってたことを人間が全部
やるとなるといかに大変か皆身に染みましたからね。
行商達が『耕耘機』の噂を広めたようで要望が山のように来て慌てましたよ。
生産の継続を許可して下さって有り難うございます。
職人達も張りきってますよ」
人力で耕すより魔力を提供するほうが楽らしい。
この世界の普通の人は生活魔法は使えても大きな攻撃魔法は無理な人が多い。
魔力の保有量が多くないってことだね。
だからあの「耕耘機」を動かすとなると一人や二人の魔力じゃあ足りないのだ。
なので村中総出で……と言うことになる。
戦場になった村々には無料でレンタルした。
でもその他の村からはレンタル料を払って貰うことになった。
不公平かもしれない。
でもなにもかも無くした南部と直接的な被害の無かった所は同じじゃあないよね。
勿論、利益が目的じゃあないので戦前の馬のレンタル料より安めの値を付けた。
物にはなんでも値段がある。
それを忘れないで欲しいからね。
「よろしいんですか?
アレの制作費を考えたらとてもあんな値段ではレンタルなんて無理なんですが」
馬が足りるように成るまでの繋ぎですからね。
大きな負担にはしたくないんです。
でも無料だとかえってぞんざいな扱いに成りがちだと思うんです。
南部の方にはこれ以上負担を掛けたくないですが他の地域なら多少でも負担を
お願いしたいです。
レンタル料は南部の支援に使って貰うことにした。
レンタル料を払う人達も多少でも気持ち良く払えるだろうから。
お金はいつでもどこでも足りないものだ。
それでも有意義に使いたいし使って欲しいと思うんだよね。
まあ、「楽しい無駄使い」ってのもあるんだけどさ(笑。)
北部の領地にも「耕耘機」を導入することにした。
なにしろ北部は人が足りない。
時々奴隷を購入して補充してるんだけどね。
やっぱり奴隷でいる期間を多少でも短くするのは喜んでくれるようだ。
養鶏のエサのセタル(ネコジャラシもどき)を増産中なんだ。
勿論、麦もだけどね。
大豆モドキなカナバルもセタルもあまり土壌を選ばない。
つまり何処でもソレナリに育ってソレナリに収穫ができるのだ。
しかも丈夫で手も掛からない。
手の足りない北部では有り難い作物ということになる。
目指せ! 自給自足! 目指せ! 増産!
まあ、実際に働くのは領民と奴隷達なんだけどね(笑)。