674・趣味人。
それにしてもどうしてオレに何か有ったと気付いたんだろう。
魔王国からオレのコトを見張ってた訳じゃあないよね?
「この森には時々来てたんだよ。
おじいさまや父上も居るしね。
それに勇者もそうだが君も魔力がちょっと独特でね。
集中すればどこに居るのかくらいはすぐに分かるんだよ。
私は勝手にオリーザ国に入国は出来ないがココは中立地帯だからね。
まあ君のことをちょっと覗くくらいなつもりだったのは否定しないよ。
かなり強力な結界と君の魔力の揺らぎを感じたんだ。
何か有ったか、何かしたかなのは確かだと思ったんだよ」
うへぇ……オレが何処に居て何かしてるってのがバレまくってるよ。
どうしよう……「魔族には秘密」って神託が下りてるのに。
でも事情説明くらいならあの神託に抵触しないかもしれない。
呪文がバレなければ使えないモノだと分かっているんだし……
事情を魔王陛下に説明した。
神託が下りていて「魔族には秘密」となっていたことも。
「禁呪」と聞いた魔王陛下はなんだか少し嬉しそうに見える。
ダメですよ!
魔族だと発動させられる可能性が高いから「秘密」なんですからね!
「君が結界の中でやってたのはその検証だったんだな。
威力としてどうだったんだね?
禁呪にしたくなるような代物だったのかね」
はい。最低威力の呪文のはずだったんですがココの最上級呪文並みでした。
とても最上級呪文まで試す気にはなりませんでしたよ。
解毒の呪文を私と義妹が使いましたがかなりの魔力量のハズの彼女は魔力切れで
ひっくりかえりました。
私も同様でしたよ。
魔族は魔力量が多いですからね。
呪文が広まってしまったら危険と管理神様も判断されたんだと思います。
「ふむ。確かに危険そうだ。
魔族は魔力が人族より多い上に血の気が多い連中が多いんだ。
小競り合いが大事に発展しかねないのは否定出来ないな。
だが「禁呪」と聞いてちょっとワクワクしたのも否定出来ないよ。
その「解毒の呪文」だけ教えてもらえないかな?
攻撃呪文じゃあ無いから危険は少ないと思うよ」
だ、大丈夫かなぁ……大丈夫だよね……
言ってるのがこの方でなかったらこんなに不安にならないんだろうけど。
ココで秘密にしてもアノ呪文を聞いた人なんてすぐ探り出されると思う。
魔王国が諜報能力でオリーザに負けてるハズもないし。
管理神様の意向が「魔族には秘密」なことを再度強調して解毒の呪文だけ教えた。
ニコニコと上機嫌で魔王陛下は帰って行かれた。
「勇者に聞いた前世の魔王もかなりの趣味人だが今世もおんなじ感じだなぁ。
アノ呪文をいじくり廻して攻撃呪文を新たに造り出さないと良いんだが」
ダ、ダテさん……脅かさないで下さいよ。
あの方に侵略の意思は無いって勇者も言ってたんです。
だ、大丈夫です大丈夫です……きっと。
実は大丈夫じゃあありませんでした。
魔王陛下はダテさんの言うとおりの方だったんです。
誰にもバレないように強力な結界を張った上で禁呪をいじくり廻しちゃいました。
いざ完成!
ちょっと勇者との遊び場なリゾートアイランドで試そうとしたところで
婚約者にバレました。
彼女……転生者な上に最近は大分前世の記憶を取り戻してきてました。
ゲームのことも……
まあ、結果がどうなったかはご想像に任せましょう。
どうやら魔王陛下は恐妻家になりそうな雰囲気だとだけお知らせしておきますね。
どっとはらい(笑。)