661・ラーメンとうどん。
オレは醤油派だ。
いやラーメンはどれも好きだけどね。
一番・醤油、二番・豚骨、三番・塩、味噌は四番手なんだよ。
まあ、そういうことで醤油の再現を一番にやったんだ。
醤油と味噌はどちらも大豆を主原料にしている。
大麦や米をも使って糀菌に発酵をさせるのはどちらも同じだ。
その糀菌は一種類じゃあない。
製造に使われる場所・蔵ごとに違う種類だと言ってもいいだろう。
でもココの世界でどれが一番醤油や味噌に最適かってのは特定できなかった。
……いや、面倒くさいと思っちゃったんだよ。
なにしろ発酵をする菌は糀菌だけじゃあないし……
なので糀菌の代わりに錬金術でショートカットをしちゃったんだ。
まあ、現時点では試作の段階だからね。
将来的にはお酒のように普通に発酵で製造したいと思ってるんだよ。
そういえば大津波で蔵ごと流された酒造会社の話があった。
糀菌は水と同じようにお酒の味に影響するんだよ。
蔵ごとやられたので蔵に住み着いていた糀菌も勿論全滅!
お酒はその蔵の糀菌でなくても造れるけど同じ味にはならないと蔵主は
諦めかけたそうだ。
ところがその蔵の糀菌を保存していたところがあった。
大学の研究室に研究のためにと提供していたのだ。
研究者も蔵主も勿論酒を買う客達も皆喜んだ。
ハハハ……オレもその客の一人だったってことだよ。
オレが造った「醤油」は大豆じゃあなくてカナバルが原料だ。
発酵をさせていなくて錬金術で造ったから香りは薄めだし味わいも微妙に違う。
とまあ言い訳を殿下にまくしたてた訳だ。
「フフフ……やっては見たんだね。味噌も(笑)」
あー……上手く造れなかったのを見抜いちゃってるなぁ、この人。
醤油もまだ出来たばかりなんです。
味噌はこれから! ということでご勘弁下さい。
「そうか……食べたかったんだがね、味噌ラーメン。
もっともココにはラーメンなんて無いんだが」
有りますよ。もっとも名前だけでモノは「うどん」でしたよ。
つゆも魚介じゃあなくて肉みたいでしたし塩味でしたけど。
「なんだか混沌としてるなぁ。
それはラーメンって言って良いのかね?
食べてみたい気もするがなんだか怖いって思っちゃうな」
キッチンに問い合わせたら造れる者が居たので試食してみてもらった。
どうやら賄いになっていたらしい。
立ち食いのお店並みに早かったから。
「なるほど。確かに『うどん』だねぇ。
なんで混同されたんだろう?
でもコレも確かに美味しいよ。
ああ、醤油味のつゆで造ってもらえないかな?
それこそ『うどん』になると思うんだが」
何種類かの野菜と鶏肉をテンプラに仕立てて「天麩羅うどん」をお出しした。
出しは干物な「謎魚」で取った。
なんとか見た目だけはそれらしくなったのでホッとしたよ。
「すごいな! 夢に見ても目覚めると記憶としては曖昧だったんだよ。
オカゲで美味しい思いまで思い出せた。
有り難う。
ところで本物のラーメンを作ってみる気はないかね?」
命令し慣れてる人って無茶ブリするのはいつものことなんだろうか……
オレ……ラーメンの麺には必須の「かん水」の成分が何か知らないんですけど。