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636・夜食。

 オレは走っていた。

後から息子の名前を叫んでいたと聞いた。

でも記憶に無かったよ。


孤児院の他の子供達と笑いながら畑仕事をしていた。

そこになぜ居るのか分からなかった。

兄が親代わりになってくれるコトに成っていたはずだった。

こんな北のハズレの領地で孤児院に居るなんて……

兄に何かあったんだろうか? 


抱き合っていたオレ達は監督官に捕まった。

逃げ出した訳じゃあないんだが……

二人して奴隷の主人である宰相家の方の前に連れて行かれた。

監督官には事情を一応説明したのだが……


主人にお目に掛かって驚いた。

何処からどう見ても子供……五歳くらいだろうか……六歳には見えないよな。


「事情は分かりました。

まあ、一応集団活動中でしたから懲罰対象ですね。

今夜は夕食抜きで反省して下さい。

皆とは別の部屋で一晩過して貰います。

しっかり反省して下さいね」


そのまま息子と二人で「孤児院」の中の教会の一室に入れられた。

息子と一緒に……

いいのか?


息子がこの「孤児院」に居る理由を説明してくれた。

そうか……兄は……

でも皆の話ではこの「孤児院」は悪い所ではないそうだ。

そのこともあってココに預けることにしたのかもしれない。


もう大人になるまで会えないと思っていた息子。

兄が「孤児院」に預けてくれたからこそ会えたのだ。

なぜ息子が奴隷扱いなんだと思う気持ちが無かった訳では無い。

でも、会えたのだ。

だからもう他のことはどうでも良い気がした。


息子は自分から奴隷になると伯父である兄に申し出たのだと言う。

そうか……やさしい子だから病気で苦しむ従姉妹や伯父を見かねたのか。


「お父さんが居なくて寂しかったよ。

でも孤児院ココは楽しいことがいっぱいなんだよ。

友達も出来たし勉強も教えてもらえるんだ。

農作業もあるけど村に居たときより楽だよ。

でも晩ご飯抜きがあるなんて思いもしなかったね」


すまん……オレが我を忘れてしまったからなぁ。

でもいつもの夕食の時間が過ぎた頃、神官様が食事を運んで下さった。


「コレは夕食ではありませんよ。

『夜食』です(笑)。

二人だけで過ごせるのは今夜のみになるかもしれません。

ゆっくり過して下さいね」


今夜のみ? 今夜のみって……


「アナタの息子さんはスキルが付いたんです。

スキルの付いた子は旧都の神殿でスキルを伸ばす教育するようにと主人の

ヘンリー様から指示が出ています。

他の子より良い扱いとなりますし大人に成ったら仕事をする上でも

有利になります。

勿論、断ることも出来ますが今のところ断った子は居ませんね」


やっと会えたのに……

でもこの子の将来を考えたら良い話だろう。

やっと会えた……でも……

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