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632・ストリクス村の村長と耕耘機。

 村に珍妙な魔道具が届けられた。

旧都のヘンリー様からだということだった。

あの方には返しきれない程の恩がある。

まあ、妙なコトをされる方でもあるのだが……


この魔道具は無料で貸していただけるのだそうだ。

馬の代わりをしてくれる物で今まで無かった新しい魔道具だそうだ。

馬……馬がいるならどれだけ農作業が楽になるかと皆思っている。

でもほとんどの馬は戦争に駆り出された。

戻ってきた馬はほとんどいなかったし国の中で馬が居るのは軍隊くらいだ。

他の国から最近うさぎ馬が輸入されているそうだがこんな村に廻ってくるのは

いつのことになるのか……


耕耘機こううんき」というこの魔道具はとんでもない魔力喰いだった。

なにしろ村の大人達だけでなく子供達の魔力まで注入してやっと動いたのだ。

それでもちゃんと畑を耕してくれたのは有り難かった。

人力だけで村中の畑を耕すのがどれほどのことか……身にしみたからな。

馬の有り難さを改めて実感したんだ。


この耕耘機を買い取ることが出来るのか運んでくれた商人に聞いてみた。

驚いたなんてもんじゃあなかった。

そ、そこまで高い代物だなんて! 

そんな物をタダで貸すだなんてあの坊ちゃんは一体何を考えてるんだろう? 


「高いですよねぇ。馬の一頭二頭なんてもんじゃあないんですから。

でも実際問題として馬が居ませんからね。

馬がいればこんな変な魔道具なんて必要ないでしょう。

でも馬の数が元に戻るまでの間に合わせに使えないかということだそうです。

使っているうちにきっと不具合も出てくるでしょう。

まあ、無料で! というのはそういうことです。

皆さんに使って試して貰うってことですよ」


なるほど……魔道具がちゃんと使える物かどうか確かめるのは使うのが一番か。

そういうことなら遠慮無く使いまくっても大丈夫だよな。


村中の畑を耕した。

村の外の草原だった場所まで耕してじゃがいもを植えた。

収穫を期待してと言うより土地の浄化が目的だった。

草原が徐々に戻ってきたのを見たときは嬉しかった。

ココは薬草や野草が採れる場所だった。

子供達が遊ぶ場所でもあったんだ。


「魔力を山ほど注がないと動かない物だけどちゃんと役にたったなぁ。

おかげでオレは魔力量がこの歳で増えたんだよ。

生活魔法を使うのがラクチンになったんだ。

まあ、ガキどもに比べたら少ないんだけどな」


そうなんだ。

子供達の魔力量の伸びがハンパないんだよ。

子供に魔法を使わせすぎると成長に影響するって話を聞いたことがある。

……子供達には無理をさせないように気をつけないとイケナイかもな。


ヘンリー様には気付いたことを報告することになっている。

馬の数が元に戻るまでにはまだまだかかるだろう。

耕耘機のオカゲで多少の蓄えができそうだ。

いつか馬を買えるように無駄使いしないようにしないとな。

タダで耕耘機を貸して下さったヘンリー様に感謝しよう。


何度見ても「耕耘機」が変な魔道具なのは変わりないんだけどな。

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