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628・名前(近衛騎士の妹)。

 第三王子の侍女として……西の国・アロートのスパイとして帰国した。

王子は旧都の王宮に滞在して学園に通っている。

婚約者のリリア王女は学園の寮住まいながら週に一度ほど王宮に来られている。

王子と旧都巡りなどをされて関係は順調なようだ。


スパイとはいえ侍女なんかに国の機密とかのことが探れるはずもない。

私は王子の生活の様子とかを報告すれば良いらしい。

王子に対するオリーザ国の扱いとかが注目点のようだ。

王子がオリーザに取り込まれないか心配なのかもしれない。


アロートから付いて来た護衛は護衛でありながら監視役でもあるようだ。

なにしろ周りの警戒より王子の様子の方気にしてるのが私にも分かる。

あんなにミエミエだなんて良いのかしら? 

王子にもバレバレだと思うんだけど。

もっとも常に皆から見られる立場の方だから気にも止めていないみたいね。


従者達が王子の行動を休憩の時に話すので王宮の外での様子も分かる。

侍女より従者をスパイに仕立てる方が効率的にも良かったんじゃあないかなぁ? 

男と女じゃあ見える範囲が違うのかもしれないけれど。


学園生だった頃はほとんど学園から出ることが無かった。

だから旧都のことはよく知らない。

学園の中なら分かるんだけど……

なので旧都を観光して廻っている王子達が羨ましくなった。


お休みの日に新人の冒険者達に護衛とガイドを依頼して出かけてみた。

アロート国では侍女達にはほとんどお休みが無い。

でも、この国だと週一くらいでお休みがある。

もっとも交代で……なんだけど。


王子達が廻ったという場所を順に廻ってみた。

神殿・子供の公園・競馬場・馬車の通行を時間制限している商業地区……

学園は……入れるわけも無いので外から眺めた。

あと少しで卒業できたのにと思うと何だか切ない気分になった。


驚いたのは新しい城壁が建築中だったことだ。

王太后様はまた次に難民達がおしよせてもちゃんと街に収容したいと思われたと。

ズラリと彫られた寄付者達の名前の列に圧倒された。

平民・貴族・元難民も……皆王太后様のお気持ちに動かされた結果だと言う。


「銅貨一枚でも受け付けてくれましたからね。

名前の彫り賃の方が高いんじゃあないかと心配するヤツまで居ましたよ。

まあ、その辺りは商業ギルドが上手くやってくれたようですが」


名前……実家は取りつぶされた。

父は自決したので執事が素早く埋葬を済ませたと言われた。

代々の墓地に隠れるように目立たないように埋められたそうだ。

兄については元執事にも教えてもらえなかったと言う。

なので観光の記念のふりをして父と兄と私の名前で寄付をした。

埋葬地が何処でも私はそこには行けない。

行くわけにはいかない。

今の立場では……


兄はどうなってしまったのだろう。

せめて遺体が貴族として扱われていますように。

昔は魔獣のエサにされていたことも有ると聞いた。

執事にさえ教えてもらえないような扱いだったのだろうか? 

陛下を襲撃した大罪人……

でも、私には優しい兄だったのだ。


兄をそんな目にあわせた西の国・アロート。

なのに私はその国のスパイ……

勧誘してきたあの男の顔を思い出す。

殴りつけたいような気持ちを抑えながら……

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