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625・昔と今。

 次の学園の休日にもグラディス王子はやってきた。

そろそろ観光スポットもほとんど廻っちゃったんだけどねぇ。

でも今日はお一人じゃあなく同伴者付きだったよ。

なんと婚約者のリリア王女様だった。

……デートならお二人で行って下さい。


「まあ、そう言うなよ。

お互い国の政策で婚約者になったが気心が知れてる訳でも無いんだ。

多少なりとも良い関係を望んでは居るんだが戦後だしね。

周りの目も結構厳しいんだよ。

ココなら宰相家の館だから訪問しても誰も文句の付けようが無いからな」


「ごめんなさいね。

普通に会話するだけでも妙な目で見てくる者も多いのよ。

アロートに良い印象を持ってる者が少ないってことなんでしょうけど……」


「お前のアドバイス通りアロートの服を脱いでみたんだ。

目立たないって言葉の意味を実感したよ。

何時でも何処でも目立っているのが王族だと思ってたからね」


それでもイケメンな王子様だからすぐにバレると思うけどね。

あのキラキラ衣装は鎧のようにも見えたんだよ。

相手が警戒していると何処かで感じてしまうとコチラも警戒してしまうものだ。

留学がいつまでになるかは分からないけどこの国に馴染むにはそういう警戒は

お互いの為には不必要だと思う。


「年齢的には学園は一年間だけだろう。

後は軍の士官学校辺りに在籍することになると思う。

アレは王都に有るそうだからリリア王女と頻繁に会えるのはこの一年のみだ。

出来たら良い関係を築きたいと思ってね」


彼の立場はお互いの国の関係に左右される。

婚約すら政治的な道具でしか無い。

ちゃんと結婚できるかどうか怪しい不安定といえば不安定なものだ。

それでも「良い関係」を築きたいと言う。

う~ん……その辺りが彼が王族な証明かもしれないね。


「この婚約が国の為のものだと皆わかってるのよ。

でも事情は理解出来ても気持ち的に納得がいかない人も居るの。

建国以来四百年の間、貴族はともかく王族は婚姻関係を拒否されてたから……

他の人の国々とは少なからず有るのだけれど」


「別に法で禁じていた訳じゃあ無いんだ。

オリーザの初代国王の妃はアロートの王女だったんだよ。

でも彼女は第一妃じゃあなかったんだ。

第一妃が亡くなるまでずっと第二妃の地位だったと聞いた。

父王はソレを恨まれてたんだそうだ。


圧力をかけてもオリーザ王は第一妃が亡くなるまで拒否を貫いた。

よほど思い入れのある方だったんだろうな」


そ、そこまでの思い入れを持つような人だったかなぁ? 

オレの知ってる「山田織座やまだおりざ」はごく普通の男だったんだけど。

大恋愛とかするようなタイプには見えなかったよ。

まあ、ココでの経験が彼を変えたのかも知れないけどね。


「王女は父王に愛されていたんだそうだ。

そうしてもう子供の居る妃が居たのに押しかけるようにオリーザ王に嫁いだ。

末席でも構わないと宣言して。

貴族も王族達も父王を気の毒に思ったんだそうだ。

そのままずっと姻戚関係は持たれなかったんだよ。

惰性といえば惰性だけどね」


国のためなら王女を第一妃にするべきだっただろう。

政治といえども人のすることだ。

初代国王が何を思っていたかなんてもう時の彼方になってしまっている。

昔々のことより今を生きるのが大事ってことにしておこう。


そう……この二人が生きてる今が大事ってことで。

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