59・窮屈。
幸い気付いた人は多くなかった。
なので彼等は別室に招かれて口止めされた。
男の子の関係者がほとんどだったのでコトはスムーズに運んだよ。
「早熟な天才なんです。
でもまだ修行を始めたばかりでコントロールが甘いんです。
あの通りまだ幼児ですからね。
普通の神官のように施術などさせられないんです。
彼女はただあの男の子と遊びたかっただけでしょう。
神官の施術ならお布施を頂戴するところですが彼女はまだ
神官じゃあありません。
でも有望な聖女候補とも言えます。
余計な噂などが広まると彼女の将来を潰すかもしれません。
どうか皆さん内密にしていただきたいのです」
皆分かってくれた。
お布施も取らないのでソレを口止め料ということで納得してくれたよ。
実は有力な貴族家の関係者なんだとワザとコッソリな話をしておいて
微妙な脅しにもしていた。
サスガに神官さまたちはいろんな手をお持ちのようだったね。
目覚めたミーアはあの男の子と遊べなかったのが残念だったようで
ご機嫌ナナメだった。
うん、カワイイ子だったしね。
ミーアって意外とメンクイなのかもしれない(笑。)
帰ったらしばらく遊んであげよう。
今日は頑張ったことだしね。
欠損部位の復活ができる神官は高位の方だそうだ。
ココの神殿でも二人しか居られない。
しかも三~四日ほど魔力を練り込んで下準備をした上で臨む大技らしい。
なのにミーアときたら魔力量も大したこと無いくせに成功させちゃうんだもんな。
ホント天才なんだと思うよ。
神殿は神域だからだろうと思うけど回復魔法の効きが外とは段違いだ。
まだ魔力が足りないはずのミーアが欠損部位の復活をさせられたのは多分
その辺りが関係しているだろうとも思う。
それでもね……神官さまたちでもなかなかできないコトなんだよね。
神官さま達が内密にしたがるのも分かる。
まだ芽生えたばかりの才能を皆がよってたかっていじり回したりしたら
どんなコトになるか……
しかもまだ幼児だ。
体とのバランスを考えないと成長に影響するのは目に見えている。
まあ、ソレはオレにも言えるコトなんだけどね。
あの男の子は一歳の命名の祝福と産まれたとき付いていなかった手首から先を
なんとか出来るかどうかの相談に来ていたんだそうだ。
出来たとしても大枚のお布施が必要だったようだけど。
神殿長からはミーアにも正式に神官の修行をさせるコトを勧められたよ。
「ちゃんとコントロールすることを教えておかないと無意識に色々と
やらかしてくれそうでコワイからね。
その度にひっくり返られても困るだろう?
君は中身は分かってる大人だそうだからコントロールが甘くても自重が出来る。
だがあの子は意識すらしていないし自重など無理だろう。
君が全部フォローできるとも限らないからね」
う~ん……コレは将来ミーアを神官として確保しちゃいたいってコトも
あるみたいだよなぁ。
オレのコトもどうもそんな風に思ってるみたいなんだけど。
将来をどうするかなんてのはミーアが大人になってからでもイイと思う。
でも今多少なりともコントロールすることが出来れば問題を少なくできるのは
確実だろうね。
今まではオレのお供ということで側に居ればイイだけだったんだけど
正式にとなるとミーアには窮屈になるかもしれない。
勉強なんて窮屈な思いをさせられるってのはドコの世界でも同じなんだもんね。