609・育児経験。
張り子のオモチャを箱詰めして王太后様の所に持って行くことにした。
子供のオモチャだから大人な王太后様にはお気に召すかどうか分からない。
でもオレのやることは目新しいことと思われてるようなので報告がわりに
届けてみようと思ったんだよ。
「可愛いわねぇ。
こういうのって作るのは簡単なのかしら?」
完成度はそれぞれだ。まさに「子供の作品」な物から作家さんとか職人さんの
「売り物」な物としか思えない物まである。
手順は同じでも仕上がりには個性が出ちゃったってことだよね。
「それでコレを神殿で魔除けにしてもらって命名の儀に来た子に配ってると。
アナタはそれで利益があるのかしら?」
あー……別に利益が欲しい訳じゃあありませんよ。
宰相家の妹・弟にオモチャをあげたいと思っただけです。
でも魔除けに飾る物もあったのを思い出して神官様達に相談したんです。
孤児院の子供達の仕事にも出来ました。
魔除けじゃあ無い物も商業ギルドで製作販売をしてもらうことにしました。
仕事としては小さなモノですが女性や子供達の内職くらいにはなりそうです。
馴染みの無い物だからね。
専業で造ってもらえるほどの仕事になるとは限らない。
でも王太后様も「可愛い」とおっしゃって下さったんだ。
ヒヒヒ……このお言葉をチラチラ漏らして宣伝文句にしちゃってもイイかもね。
張り子は遊びに来たアイリス王女に見つかって注文が来たよ。
なので魔除けになってる物とそうでない普通の物をまとめて献上した。
学友達と遊ぶのに丁度良かったみたいだね。
女の子たちは可愛くて綺麗な物が大好きなんだ。
前世でもココでもね。
前世の母は「可愛い、綺麗で物を増やすな!」と姉達に言ってたけどそれは
ムダなお説教だったよ。
そういう「可愛い、綺麗」が女の子を構成してるとオレは思ってた。
まあ、母には言えなかったけどね。
なんでも手作りなことが多いココでは思ったよりも違和感なく張り子の魔除け
やオモチャは受け入れられたようだった。
カラフルに彩色された張り子達は旧都のお土産にもなったんだよ。
でも、宰相家の弟・妹にはまだちょっと早かった。
赤べこのように首を振るタイプも作ったんだけどね。
う~ん……ラトル(がらがら)の方を先に作るべきだったかなぁ。
前世の井沢健人君は独身でした。
甥達や姪達が居ても育児経験はほとんど無いようなものです。
見ては居たんですけどね。
なので必死に甥姪達の小さな時のこと思い出そうとしています。
まあ、思い出した頃には妹・弟は大きくなってるかもしれません。
間に合うかなぁ……間に合うといいなぁ。




