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604・帰国。(近衛騎士の妹)

その男は先王の王弟殿下の使いと名乗ったのだけれど違うと感じた。

あの方は私達のことなど放置されているのだ。

領地の隅に住まわせておくだけのもう使い道の無い先王の遺物くらいにしか

思っていないのだ。

だからこの男は偽物でしかない。


それでもこの男の持ってきた「仕事」を受ける気になったのは行く先が故国

「オリーザ」だったからだ。


「どうやら私の素性を感づかれたようですね。

でも明かすわけにはいきません。

ココは王弟殿下の領地ですしね。

あの方は王になる気は無いようですが国のためならなんでもされる方です。

私も命は惜しいんですよ。


さて、『仕事』は父君のなさっていたのと同じです。

情報を集めるだけの簡単なお仕事です。

本来の目的とは違う運用をしてしまったので情報網がズタズタなんですよ。

ささいな情報すら集めにくくなってしまいました。

アナタにお願いしたいのはそういうささいな情報収集です」


オリーザに戻れば逮捕されて最悪は処刑だろう。

それでも受けたのはお父様とお兄様がどうなったのか……何処に葬られたのか……

それを知りたいと思ったからだ。

まともな扱いはされていないかもしれない。

だからこそ知りたいと思ってしまった。


母は反対した。

でも……このまま王弟殿下の領地で生きているだけのような生活を続けるのは

なにか違うと思ったのだ。


先王陛下の第三王子はオリーザ国の王女リリア様と婚約した。

旧都に有る学園に留学してオリーザ王家の人達と親交を深めることになった。

表向きはともかく人質なのは明らかだ。

私はその侍女の一員として随行するのだそうだ。


学園……もう少しで卒業だったのに……


髪と目の色を魔法で変えて別人に変装した。

それにしてもなんで私に情報収集なんかさせる気になったんだろう? 

自国の者の方が信用できるだろうと思うのに。


「上の者に言わせるとアナタなら切り捨てが簡単だからだそうです。

自国の者だとバレたら責任問題が降りかかってきます。

でもアナタなら家族のことを知るために戻ってきたという動機があります。

まあ、見え見えでもしらばっくれる事が出来るんですよ」


最初から切り捨て宣言されるとは思わなかった。

それでも受けることにしたのだ。

母と弟の安全のために。

そうしてお父様とお兄様のしたことの結果を確認したかったから。


貴族は侍女など気にも止めない。

行儀見習いとして王族に仕えている貴族の子女でも無い限り物扱いが普通だ。

私が侍女として帰国しても誰も気付かないだろう。


お父様もお兄様もいない故国……

身元がバレたらきっと処刑されてしまうだろう故国……

それでも敵国とはとても思えない。

こんなことになっても私は国を愛しているのだろうか。

帰国したら何か分かるのだろうか。

帰国したら…… 

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