599・滞在。
先代魔王陛下はコアの記憶の引き継ぎをした後は封印せよと遺言された。
父君を尊敬されていた現魔王陛下は遺言を忠実に守られた。
コアの機能を全部はご存じ無かったらしい。
魂はもう成仏されていても「影」がコアに残って居るなんてことは……
「おじいさまからコアの機能について話を聞いて驚いたよ。
なので封印を解いてみたんだ。
もうじき自壊する百年目が来てしまうんだよ。
せめてそれまでだけでもと思ってね。
父上はもう『影』だが勇者・ダテに会ってみたいと仰せになられた。
なのでココに来てみたんだ。
君の邪魔をするようなタイミングで悪かったね」
現魔王陛下は即位されてからまだそれほど経っていないって話だったけど……
そろそろ百年になるってことだよね。
まあ、人と魔族は寿命が違うから時間感覚も違うのかもしれない。
「久しぶりに父上が戻ってこられたような気がしてるんだよ。
『影』でもやっぱり父上だからね」
「私はコアの機能については知っていたんだ。
でも息子の治世の邪魔はしたくなかったからね。
それに死んだ者にいつまでも頼られても困る。
なので引き継ぎでもコアの情報については少しばかり細工をしたんだよ。
まさか父上のコアが残ってるなんて思わなかったし」
百年近くも封印されたままだっただなんて退屈とかしなかったんだろうか?
王だったなら国のことが気になったと思うんだけど。
「安置場所が魔王城のテッペンとも言うべき塔の上だったからね。
少なくとも王都の様子は眺められたんだ。
だから息子が頑張っていると感じられて嬉しかったし安心してたんだよ。
まさか戦争を始めるなんて思わなかったしね」
「それはもう解決したんですから……ご勘弁下さい。
魔王国も人の国・オリーザも前世が神官だったという大臣の秘書にいいように
振り回されてしまいました。
私も前世の記憶がよみがえってしまって難儀したんです。
良い教訓だと思うことにしたんですよ。
まあ、その辺りはオリーザ王も同じでしょうが」
なるほど……「影」にはもう魔法も使えないけれど勘弁して欲しくなるような
コトを言って来かねないってことか。
元魔王様も父君が口うるさいので封印しちゃったようなことを言ってたよね。
慣習に従って封印……なんか納得しちゃうよなぁ。
オレが感じた事は元魔王陛下も感じられたようでなんだかドキリとされた顔を
されていた。
そのせいか元魔王陛下はダテ神社に暫く滞在されるそうだ。
前魔王陛下も一緒に。
現魔王陛下の邪魔をしたくないしダテさんや元魔王陛下と過すのが楽しいらしい。
ちなみに前魔王陛下のコアは百年の期限がきても自壊しませんでした。
ダテ神社が神域だったのが影響したみたいです。
管理神様も「面白い物」とおっしゃってましたからその辺りの検証もかねて
彼等はダテ神社に滞在することになったようです。
ダテさんの退屈は少し解消されたみたいですよ。




