54・レーザー治療。
来たのは王女さまだけではなかった。
母君の側妃さまも一緒においでになったんだ。
一旦は避難先である旧都から王都にお帰りになったはずなのにわざわざまた
おいでになるなんて……
「アイリス様が病だからとお帰りにならなかったので心配してました。
お戻りになってから詳しい話をして下さったので娘のために私もお願いしようと
やってまいりました。
王太后さまにもご許可をいただいております。
よろしくお願いしたいんです」
それで……一体何をご希望なんでしょう?
「極力この子の秘密を守って参りました。
大人になれば消えてしまうモノもあると聞かされましたし子供のうちでは無理に
処置をしない方が良いという医者もおりました。
でももうじき成人ですし……神官様たちでもコレは無理だと言われてしまって……
でもアイリス様の呪いのアザをアナタがキレイに消してしまわれたと聞いて
診ていただくだけでもと思って……」
王が側妃に選ばれただけなことはあると思わせる、とーっても綺麗な方だった。
そんな綺麗な方が涙ながらに訴えてくるなんて……
王女さまはリリア様と名乗られた。
「もう諦めてはいるのですが母の願いを無視もできません。
ダメでもアナタを責めたりしませんので診るだけでもみてほしいのです」
王女様はベールの付いた帽子をかぶっていた。
……まさか……
ソレはオレのイチゴ状血管腫とは違うモノだった。
アレは成長すると消えてしまうことが多い。
王女様のコレは……多分本物の「太田母斑」だろう。
自然には消えない代物だったと思う。
濃い青が顔の左側のかなりの部分を覆っていた。
彼女以外の魔力は感じられないし……
一応神殿からも神官さまに来てもらった。
意見も聞きたかったしココの世界での「太田母斑」がどう治療されてるかが
よく分からなかったから……
「残念ながらこの手のアザは治療出来ないモノとされています。
生まれつきなモノですから……」
「でも、この子は産まれたときはきれいな肌だったんです。
徐々に色が付いてきてこんな濃い色に……
生まれつきこんな色じゃあなかったんです」
うん……そういう人はかなり居るみたいだね。
別扱いされたりするけど大人になってから出てくる遅発性のモノまであったんだ。
どちらにしても治療はレーザーを照射して焼くんだけどねぇ……
ココにレーザーなんか無いんだよ。
オレのやった治療は浄化の魔法と強力だったかもしれないけどたかだか
回復魔法でしかない。
魔法が万能じゃあないことは生活魔法を色々使ったり神官様たちと接するように
なってよく分かってきたと思う。
でも、アイリス様によく似たこの方がもう諦めているとおっしゃるのは
やっぱりお気の毒でならない。
さて……オレの魔法でドコまで効果があるだろうか?
レーザー照射で治療するんだと知ってても見たコトなんてないもんなぁ。