51・リサイクル。
商業ギルドから帰ってきたカール君が殴り込みがあったと報告してきた。
酔っ払った狩人と村人だったという。
原因は森を丸裸に切ってしまったことだった。
彼等は領主の森の利用者で森の恵みのアレコレを生活の糧としていたそうだ。
領主に訴えても、もう売ってしまったからと門前払いだったようだ。
文句だけでも言いたいと街の商業ギルドまで来たものの入る勇気が足りず……
酒の力を借りて乗り込んだということらしいね。
まあ、酔いが覚めて青くなってたそうだけど。
結局お説教ひとつで解放されたという。
気持ちは分かるし酔っ払ってたから……ということだそうだ。
でも、森の恵みが生活の糧だったとすると森が再生するまで彼等の仕事が
無くなってしまうことになる。
そう言えばココには入会権とかは無いのかね?
う~ん……無かったよ……少なくとも法律でキチンと決まってはいないらしい。
ソコのモノを皆で利用できる権利なんだけどね。
やっぱり丸裸になってしまったら森は森じゃあないもんねぇ。
彼等の気持ちも分かるのでギルマスに相談を持ちかけた。
彼もどうしたものか悩んでたらしい。
「その入会権? ってのは聞いたコトが無かったです。
持ち主が領主だったので森の利用はどうもお目こぼし的な扱いだったそうで。
彼等の生活を脅かしてしまうとは思ってませんでした。
なにか良い方法ってありませんかね?」
木魔法で成長を促進してるから森に戻るのは普通より早いだろう。
でもソレは一朝一夕って訳じゃあない。
森が元に戻るまでの仕事をなんとかすればイイと思う。
他の森の伐採とか木の運搬とかの仕事を優先で斡旋してもらうことにした。
森での仕事をしてきた人達だから慣れてると思うしね。
他の森についても丸裸はアカンということで部分的な伐採でやってもらっている。
前例ができたからね。スムーズに話が進んだみたいだったよ。
伐採のたびにギルドに殴り込みがあっても困るからね。
ついでに防火帯をも設置してもらった。
コノ世界で森林火災が起こったら消すのは大変だろう。
前世の世界だって結構大きな森林火災が起きてたから……
水魔法の使える魔道士を総動員してもドコまで効果があるか分からないし……
全部燃えてしまうくらいなら木の生えてない防火帯の設置の方がイイと思うよね。
しかしまあ、たかが段ボールくらいで環境破壊とかになるとは思ってなかったよ。
待てよ……コレはリサイクルとかも考えたほうがイイかもしれない。
たしか段ボールってほとんどが古紙として回収されてたし原料の九割はそういう
古紙だったはずだ。
リサイクルの優等生な製品だったよ。
う~ん……ココでも優等生にできるかなぁ?
しないとイケナイかもねぇ。
入会権
一定の山林原野または漁場に対して、特定地域に居住する住民が、
平等に利用、収益しうる慣習法上の権利。(goo辞書)