2・コタツでミカン。
ソコは白い部屋だった。
なんで色が無いんだろう?
「色が無いと落ち着きませんか?
付けても良いんですがココに色が付いていると魂だけになってるアナタには
余計な負担が掛かっちゃったりしますからね。
まあ小物くらいなら大丈夫でしょうけど」
綺麗な少年……中学生くらいかな?
一体誰なんだろう?
と思ったけどこんな所にいる存在なら天使か神さまだろう。
ということはやっぱりオレって死んだのかな?
「気の毒だがその通りじゃ。
まあ、あそこで落ちたのは君だけじゃあ無いんじゃよ。
早めに対策を取って欲しいもんじゃな」
振り向けばもう1人居た。
いや……神さまならもう一柱かな?
サンタクロースにも成れそうな綺麗なおヒゲのじいさんだった。
「お茶でも飲んで落ち着いてほしいんじゃが……」
さっき魂だけになってるって言ってたと思ったんだけど……
「まあ、ココはアナタの夢の中みたいな所ですからね。
私たちは一応神なので色々と再現するのは簡単なんです」
はぁ……夢ねぇ……
まあ、お茶の一杯で気分が落ち着けばなんとかこの事態を納得できるかも……
「コタツが気に入って居るんじゃよ。
なかなか出る気にならなくなるのが欠点だとは思うんじゃがな」
なぜかコタツにお煎餅と煎茶が用意されていた。
ミカンも欲しいところだな……と思ったらとたんに出現した。
色付きで。
「君は最近では珍しい善行と悪行がプラスマイナスゼロな状態の死者なんじゃ。
生まれたてで死んでしまう子でも親より先に死ぬとソレも罪に数えられる。
君も親より先に死んでるけどその他の善行のせいで丁度プラマイゼロなんじゃよ。
なので天国も地獄も行かないで輪廻の輪に行くことができるのじゃ。
でも、ちょっと君をスカウトしたいという話があってな。
別の世界に転生してほしいんじゃ」
天国にも地獄にも行く資格は無いって……ことですか?
「どちらも前世のシガラミをプラマイゼロにするところなんですよ。
ソレが済んだらみなさん輪廻の輪に乗って転生されていくんです。
アナタはアノ世界の住人でしたから転生でアノ世界にも転生先の世界にも
良い影響をもたらすことができます。
私の世界に来ていただきたいんですが……」
「ほとんどは元の世界を希望するのでな。
転生で違う世界に行きたがる者はどちらかというと少ないのじゃよ。
ただ君の場合は元の世界だと人以外の種族になる可能性が高い。
他の世界なら人のままで転生できるのじゃがな」
プラマイゼロでも転生先の種族の選択には色々と訳の分からない基準が
有るみたいだね。
まあ、神さまの基準には文句も付けられないやな。
「元の世界での転生だと君は獣人の可能性が一番高いからのう。
それでも良ければ元の世界に転生してくれてもかまわない。
どうするかは君次第じゃよ」
記憶も無くなるのになんで希望なんか聞くんです?
勝手に転生させるんじゃあないんですか?
「ソレをするとなかなか次の人生になじめないことが分かってるんじゃよ。
記憶は失っても魂には残るモノもあってね。
ソレが微妙な影響を及ぼしたりするからできるだけ希望に添うことに
なってるんじゃ」
獣人やその他のファンタジーな種族はアノ世界には居ないのかと思っていた。
でもどうやら居るみたいだね。
でも、そういう種族にアコガレとかは持っていないんだよ。
やっぱり普通の人間がイイと思っちゃったんだ。
「ありがとうございます。
記憶は失われます。
魂だけなので大したチートもありません。
向こうの世界は魔法もありますがアナタも向こうの人並みの普通人ということで。
でも、ちょっと条件の良い所に行けるようにしましょう。
来て頂けると私の世界を活性化できるんですよ。
転生していただくだけで……ね」
そうしてオレは転生したんだ。
ちょっと生活しやすい条件のイイ人生……のハズだったんだけど……
なんか最初からイレギュラーなコトばっかりだよなぁ。
まあ、『親』のアノ宰相閣下は邪険な口をきく割にお人好しだったから
放り出されもしなかった。
前世の記憶があってもオレはまだタダの赤ん坊だ。
自分で何でもデキルまでにはまだ時間がかかるだろうな。
この時にはそう思ってたんだけど……