37・発熱。
思わずシゲシゲと見つめてしまった。
失礼なことなのはコノ世界でも同じなんだけど……
「父は錬金術師でオマケに薬の研究にはまってたんです。
好奇心で父の研究室に潜り込んでしまった私は薬品の壺を倒してしまって……
直後ならココまで酷くならなかったはずなんですが気を失った上に大人に見つけて
もらうまでに時間がかかってしまいました。
回復魔法も時間がたつと効きにくくなって傷跡とか残ることが多くなるんです。
壺の薬品は魔力を込めて熟成中だったんだとか。
でもまだ途中だったので薬というより毒だったそうで……」
魔力で探ってみた。
あぁぁぁ……手だけじゃないね、コレ。
左手から左腕・左肩・背中のほとんど……そうして右足、主に太もも辺りまで。
重傷だったと思う……よくコレで助かったと思うよ。
でも助かればそれで終わりってものでもない。
現に彼女は残ってしまった跡で苦しんでる。
「何度か高位の神官様たちに診ていただいたんですがこれを消すのは無理だと。
消せないものと諦めてたんです。
でも、少しでも誤魔化せるものなら誤魔化したいとも思うんです。
なんとかできるものならお願いしたいんですが」
うん……気楽な気分でお化粧のことを考えてたんだけどね。
こんな深刻なケースが来るとは思わなかったよ。
でもコノ薬品やけど(だと思う。)はなんとか出来そうな気がするんだよね。
彼女の手を取って回復魔法をかけた。
うん……効かないね。
でも分かったこともある。
なんというか……彼女自身の魔力が薬品やけどの跡を固定してるんだ。
全体を治すなんてオレには無理だけど範囲を限定すれば何とかなると思う。
彼女の許可を得てもう一度試してみた。
小指だけに限定してクリーンの魔法を最強威力にした。
そうして回復魔法も併用してかけた。
彼女は固まっていた。
周りの皆も。
女性のきれいな指を「白魚のような」と表現するけれどまさにそんな風に
きれいな可愛らしい指だった。
もとのままの他の指との差が大きすぎたけどね。
他の指も試してみますか?
「お、お願いします!」
でもできたのは三本だけだったよ。
残念なことに魔力がね……足りなかったんだよ。
すみません……オレの魔力量だとコレくらいが限界です。
この先は神官様方にお願いしてみていただけませんか?
「で、でも今まで何度もお願いしてもほんの少しすらこんな風には……
お願いします! お金ならできる限りお払いします!
助けてください!」
魔力が戻ったらまたやってあげられるけどオレって神官じゃあない。
神官さんたちの仕事をとっちゃうなんてのも悪いよね。
なので次回には神官様にも来てもらってできるかどうか試してもらうことにした。
本職なら魔力量もオレより多いだろうしね。
でも、コレには彼女の魔力も関係してるから一度に大きな面積を処置すると
反動があるかもしれない。
そのあたりを一応注意しておくことにした。
まあ、案の定発熱しちゃったそうなんだけどね。