1・魔力の複合作用。
異世界に行って帰ってくるというパターンで書いてたので今度は
行ったきりの転生者で書いてみることにしました。
今回はの主人公は
「ハズレな勇者とバイトな神様。」にチラッっと出てた「左腕息子」です。
勇者でもないし魂だけの異世界移動なのでチートもありません。
あるのは前世の記憶だけ……だと思うんだけど……なんだかスタートから
雲行きが怪しい気がしますねぇ……
未来はドシャ降り……かもしれない。
落ちた。
死んだ。
転生した。
異世界に。
でもねぇ……オレ、普通の夫婦の普通の子として生まれるはずだったんだけど
なんで宰相閣下のトコに生まれちゃったのかねぇ……
しかも前世の記憶……残っちゃってるよ……
神さまが「記憶は消えちゃうけど条件のイイ所に生まれます。」なんて言って
くれてたんだけど話が違うんだよね。
しかも宰相閣下は独身中年だ。
「子どもなんか作った覚えはないぞ!
独身だけどモテたことないし……」
とまあ、会った途端妙なコトまで自白しちゃってた。
結局オレがなんでこんなコトになってるのかは通りがかった呪術師のカップルが
解明してくれた。
宰相閣下が勇者を召喚しようとしたら勇者じゃない女性が出てきて彼女が魔力を
暴発させてしまったんだそうだ。
建物は全壊、その場にいた者達はほとんどが重傷。
閣下も足と腕がイカレてオレはその時ちぎれた左腕なんだそうだ。
「暴発した女性と救助に当たった勇者の魔力が複合作用を起こしたみたいです。
左腕だけじゃあ大人の体を造るのには足りなくて赤ん坊になったみたいですね。
う~ん……閣下の複製とか分身とか……双子の弟……ですかね。」
随分と歳の離れた兄貴だなぁ……
コレじゃあ息子のほうが通りがイイかもね。
閣下はため息をつきながらも自分に似てると思ったようだ。
結局、渋々ながらも引き取ってくれた。
でも複合作用は左腕が赤ん坊になっただけじゃあなかった。
早い! 早すぎる!
成長がこんなに早いなんて異常すぎる!
一週間で一ヶ月くらいのスピードだなんて!!!
気味悪がる世話係が宰相閣下に報告したので危うく放り出されかけた。
仕方ないので赤ん坊だけど中身は大人な転生者だと告白したんだ。
自分じゃあこんなに早く成長したいなんて思ってない。
多分コレも複合作用に一部だと思う。
しばらくすれば落ち着くんじゃ無いかと思うんだけど。
「赤ん坊のくせに中身は大人とはねぇ……
アノ勇者は私の足と腕を復活させてくれたから文句も言いにくい。
女は魔力の暴発のせいで死にかけた。
報いは受けたってことになる。
アイツラのせいには違いないんだがな……
このまま成長し続けて大人になってそのままのスピードで
老人になる可能性もある。
どうなるかは神さまの思し召しかもしれんな。」
自分でもどうしようもないってコトは分かってくれたようで
放り出されはしなかった。
世話係にはそういう呪いが掛かってたということにしたようだ。
「私は宰相だし今は魔族の国と戦争をしている。
赤ん坊が側に居ると気も散るし増してお前は普通じゃないから目障りだ。
元の王都……旧都と呼ばれている所に館があるからお前はソッチに行ってろ!
執事はベテランだし執事の妻のメイド頭はデキル女だから心配は要らん」
う~ん……コレって追い出されたコトになるのかね?
でもまあ、気持ちが分からないでもないからなぁ。
余計なお荷物は誰かに押しつけるに限るよな。
旧都の館まで連れて行かれて風呂に入れられて気が付いた。
なんで今まで気が付かなかったのかねぇ……
オレ……ヘソ無しだったんだ。
蛙じゃないんだけど……(汗。)
母親から生まれたんじゃあないから有る方が変かもしれない。
胎盤にもヘソの緒にもお世話になってないもんな。
何にも無いお腹をなでながら前世の母親を思い出してしまった。
最初っから所払いな雰囲気ですねぇ。
出生からイレギュラーなので普通の生活を希望してた彼には全てが想定外です。
まあソコは中身は大人だそうなので頑張って貰いましょう。
作者はサボりたいんですけどね。