328・猫と犬。
「猫じゃらし」正式名は「エノコログサ」。
エノコロって何なのかといえば花穂が、犬の尾に似ているからだそうだ。
犬っころ草が転じてエノコログサだなんて結構アホっぽいよな。
猫じゃらしは猫がじゃれたからってもうそのまんまだし。
でも犬も猫も両方名前になってるってのは珍しいと思う。
犬派は犬の尻尾を連想し猫派は猫をじゃれさせたいって思ったんだろうな。
オレは猫派なので「猫じゃらし」の方が先に出てきた。
エノコログサも知ってるんだけどね。
この世界の猫じゃらし・セタルはちゃんと穀物として扱われている。
前世じゃあタダの雑草扱いだったけどそれでも「五穀豊穣」の五穀の一つ、
粟の原種だった。
タダの雑草じゃあなかったってことだ。
ココのセタルはどうやら耐寒性が高いらしい。
でもどうも熟すとすぐに穂からこぼれ落ちてしまうという。
あー……収穫時期を間違えると全部落ちちゃうってことか。
粒が細かいから一粒ずつ拾うなんて無理だよなぁ。
なので収穫の終わった畑で風魔法を使ってみた。
ちょっとしたつむじ風を造って畑中を走り回らせたんだ。
巻き上げた土とセタルの実……結構山だったけどね。
土魔法で土とセタルを分離したんだよ。
畑の収量の十分の一位だそうだ。
「こ、こんなに……
あの、他の畑でも出来ますよね……コレ」
あー……でも全部集めちゃったらダメですよ。
こぼれたセタルを食べてる小さな獣や魔物も居るでしょうから。
ソレラがまとめて村や街に押し寄せて来るかも知れません。
やっても半分くらいまでだと思いますよ。
「そ、それでも収穫の増量になります。
戦争のせいでコチラに廻ってくる品々が不足気味なんですよ。
実はこの冬の食料をなんとかして頂きたいと領主様に要請したいんです。
ヘンリー様からもお伝え頂きたくて」
なるほど……そういうことか……
やけに丁寧に領地を引きずり廻したと思ったらソレだったのか。
まあ、北の国に対する備えって名目も有るから上手く話を持って行けば
なんとか納得して貰えそうな気もするよね。
どうするかは宰相閣下次第だけど。
「よろしくお願いします。
ココの収入だけで領地が運営できればよかったんですが。
でもこの領地はずっとこんななんですよ。
領民も色々我慢してくれてます。
落ちたセタルの実の回収のような知恵があればお教えいただきたいです」
う~ん……そんなことを言われてもねぇ。
結局、近郊領地に造ったような農業試験場を設置することにした。
新しい作物を導入するにしても育つかどうかの実験は必要だからね。
ジャガイモだってこの領地で育つかどうかは試さないと分からない。
まあアレは大丈夫だろうとは思うんだけど。
「植物大百科」をもっとよく調べてみよう。
農作物だけじゃなく北部の植物についてもっと詳しく調べれば何か役立つ物が
有りそうな気がするんだよ。
北海道のような「食料庫」に出来るとはとても思えないけどね。




