17・専属秘書。
商業ギルドのギルマスがお供付きでやってきた。
お供さんはこれからオレの担当になるんだそうだ。
「奥さまにご許可いただきましたので若様の秘書としてお使い下さい。
コチラの館に住み込みということになります。
ギルドとの連絡係でもあります。
名前はカールです」
秘書ねぇ……
オレそんな人に付いてもらえるほど偉そうな代物じゃあないんだけどね。
まあ、ともかくよろしくお願いしますね。
「何でもご要望に添えるように頑張ります。
よろしくお引き回しください」
オレの事情は説明されてるらしい。
なので仕事の話に行くことにした。
例の王都に召喚された勇者のコトだ。
彼についての情報を集めてもらうことにしたんだ。
彼がしたというアドバイスの内容についてもね。
「なんで勇者の情報が必要なんでしょう?
コチラとしては仕事や商品のアドバイスを頂ければソレで充分なんですが?」
オレは普通の出生だったはずなんです。
勇者達の魔力の複合作用で変則的な出生になってます。
彼等のことを知っておきたいのはまあ好奇心ですね。
でも、勇者がしたアドバイスはできるだけ知っておきたいです。
同じアドバイスをしても仕方ないですし向こうの商品その他に対抗できるモノが
提案できるかもしれません。
相手のコトが分かれば戦いやすくなるのは戦争だけじゃあないですから。
「全部同じナワバリのモノでなくてもイイんですが……
そうか……ナワバリの違うモノが分かればソチラは多分簡単にイケますね。
絵本もヌイグルミもアノ勇者のアドバイスには無かったですから」
ということでお供だった秘書なカール君の最初のお仕事は勇者の情報収集と
彼がしたアドバイスとその結果についての情報収集だった。
まあ、ギルドにはソレラの情報が入っていたようでソレをまとめてもらった。
スゴイ! と思っちゃったね。
コノ勇者さまはあきれるほど山のようなアドバイスをしている。
色んな商品や商売についての情報の豊富な人みたいだね。
オレの前世の世界と同じか似た様な世界から来たのかもしれない。
そんな雰囲気を感じちゃうんだよ。
「今まで召喚された勇者達は大体同じ世界から来てたみたいなんです。
全員同じだったとは確認できないんですが後の方の勇者が『同じみたいだ』と
言ってたという話が残ってるんですよ」
その人たちって元の世界に帰れたんですかね?
「戻った人もココに残った人もいたみたいですね。
王都で召喚した勇者も元の世界に帰ったそうです」
もう帰っちゃったのか。
ちょっと話なんかしてみたかったかも。
オレは……転生だから帰るなんて無理だと分かっているんだよ。
でも、未練が無いわけじゃあない。
親より先に死ぬのは罪に数えられると神さま達が言ってたもんな。
先に死んじゃった不孝を詫びることができるなら……
気づけばヘソの無い腹をなでていた。
親に貰ったヘソはそこには存在しないのに。