12・テディ。
やっと三ヶ月が経ってくれましたぁ!
コレでオレは1歳相当に成長したことになる。
立てた時には感動しちゃったね。
視線の高さが変わるのがこんなに嬉しいとはねぇ……
抱っこされるのとは違う嬉しさだったよ。
時々尻餅をつきながら伝い歩きなんかしてたんだけどやっぱりモンスター娘が
邪魔しに来るんだよ。
一緒に居るのには大分慣れてきたようで行動に遠慮が無くなった気がする。
デカパイ母さんや世話係お姉さんが見張ってるので流血な事態は無いけどね。
クレヨンお絵かきで描いた絵は厚紙が無かったので薄い板に貼り付けた。
コレって絵本って言ってイイのかなぁ?
絵本じゃなく紙芝居のほうが良かったかもしれない。
ココにもお伽話めいたモノはあったので題材はソレにした。
まあ、勇者とお姫さまとドラゴンが出演者だっていえば大体分かるよね。
世話係お姉さんに読んでもらう。
うん……結構イイかも。
なんでかモンスター娘がコレにハマったようで何度も「読んで!」と要求する。
お姉さんはオレの世話係なんだけどなぁ……
デカパイ母さんは文字が読めないと言う。
なので絵本なのに読んであげられないのだ。
ということでオレと一緒に文字を習って貰うことにした。
そうすればお姉さんの仕事は減るかもしれないからね。
トランプはあったけどカルタは無かった。
コレも造ってもらうことにした。
厚紙がないので木の板なんだけどね。
トランプはココの世界でも賭け事の道具になってたよ。
子供の遊ぶモノじゃあ無いって言われちゃったんだ。
でも賭け事にしなけりゃイイんだよね。
まあ、掛けるモノなんてもってないんだけどさ。
神経衰弱でもしますかね。
おばあさまは絵本がお気に召されたようで画家を雇って何種類も造らせた。
お付き合いのあるお友達にプレゼントされた。
きれいな絵と短いながら練った言葉の組み合わせがなかなか評判が良いそうだ。
大人でも絵本の好きな人は前世の世界でも居たからね。
もっともおばあさま造らせたのは羊皮紙製だったよ。
紙が有っても正式な書類とかは羊皮紙が使われてるんだって。
オレのいる子供部屋にはソレらしいオモチャもある。
執事氏によると宰相閣下が子供の頃使ってたモノもあるそうだ。
木馬まであったよ。
でも、今のところモンスター娘に占拠されている。
女の子が馬だなんてイイのかね?
まあ今のうちだけだろうけど……今のうちだけ……だよね?
それでもオレのイメージの中に有ってコノ部屋に無いモノもあった。
子供部屋なら当然あると思ったんだけど……
何が無かったかと言えばヌイグルミだ。
テディベアがあるとは思わなかったけど何か動物のヌイグルミが有るものと
思ってたんだよ。
テディベアで有名なマルガレーテ・シュタイフ社はドイツの会社だけど発売は
千九百年辺りだったはずなので充分近代だ。
中世なこの世界にヌイグルミが無くてもまあ仕方ないかも知れない。
なのでおばあさまにお願いして造ってもらったんだ。
中身は大人なのになんでヌイグルミなんか欲しがったのかって?
抱き枕代わりにしたかったんだよ。
前世で使ってたからね。
熊のヌイグルミの話をしたせいかココの世界の熊に似た動物だった。
……爪まで再現しなくても良かったんだけど……
魔物じゃあなくてちゃんと普通の動物だそうだ。
いつも通り文字の練習をしてたんだけどいつも邪魔しに来る
モンスター娘が来なかった。
振り向けば熊のヌイグルミを抱えて寝落ちしていた。
どうりで静かだと思ったよ。
でもコレじゃあとても返せなんて言えないよねぇ。