9・学友。
パニックだった。
世話係のお姉さんもデカパイ母さんも。
執事氏も飛んできたしおばあさままで！
オレはオモチャのカドでオデコにチョッピリ出血した。
どうもソレが大事だったらしい。
デカパイ母さんが女の子を叩こうとしたので止めた。
女の子は母さんのあまりの剣幕にビックリして泣き出してしまった。
落ち着かせないとイケナイので叩かないようにと釘を刺して別室に退去させる。
執事氏達は苦い顔をしていた。
デカパイ母さんの子供かな？ と思ったら当たりだった。
「今度の戦争で未亡人になったんです。
以前コノ館でメイドをしていたので若様の乳母に雇いました。
授乳の間、上の子達は館の警備兵がみてましたしあの子は別の部屋で遊んで
いたはずだったんですが……
貴族にケガをさせたとなったら子供でも罪に問われます。
貴族と平民では身分が違いますからこういうときは重く処分されるんです」
オレ、貴族と言っても庶子扱いだと思ったんですけど……
「他に後継者の候補の方が居ませんからね。
嫡出庶出は今は関係無い状態なんですよ」
授乳の間は誰もあの子を見てなかったってコトですか？
その間に事故とか事件が起こった可能性もあったでしょう？
目を離してた責任がコチラにもあります。
身分とか彼女はまだ分かっていないでしょう。
コレは単なる事故ってことにできませんか？
子供はこんなケガをしょっちゅうするものですよ。
「よろしいのですか？
ケガをされたのは若様のほうなのに」
「あんな小さな子に罪だなんてことが理解できてる訳ないものね。
この子もそう言ってることだし不問にしましょう。
でも、次はありませんよ」
おばあさま……なんかコワイですよ。
そうか……また有ったら困るもんね。
でもあの子はまた授乳時は放置されるってことなのか？
ソレも可愛そうだよね。
でも誰か見てるとなると人手が要ることになるし……
ということでアノ女の子はオレの学友名目で一緒に過ごすことになった。
まあ、一歳半くらいの子が遊び相手ってのもいささか無理がある気もするが……
デカパイ母さんに甘えまくりな様子を見ているとヤッパリこの子はオレに
嫉妬めいた気持ちを抱いたんだろう。
下の子ができると上の子は甘えん坊になったり赤ちゃん返りをしたりする
なんてのはよくある話だ。
上の子二人は七歳と八歳だそうで親の仕事だと理解できたそうだけど一歳半な
この子じゃあまだ無理だったってコトだね。
部屋は広いので子供が一人増えてもなんてことはなかった。
あんまりデカパイ母さんにくっついてるとまた攻撃されそうな気がするので
自主規制している。
だから！ そんな目で見なくてイイってば！
お前の母ちゃんを取ったりしないよーっ！
