『こころを盛る』
なあ、もう十月やね、
「あゝ、そうやなー」
早いね~
一年なんて、あっという間やね………。
「ほんまやな、」
こないだ満開の吉野桜がはらはら散る下を
あんさんと一緒に歩いて、
お茶屋さんで(ふふふ♪)
「(笑)思いだし笑いか?」
「お前のそんなとこ好きや、」
どんなとこ?
「つまらんこと嬉しそうに、大事にするとこ」
つまらんことあらへん、
うちには大事な宝物やもん♡
「そかそか、ちょっとこっちゃ来い」
ん?
なん?
「……チュ……ッ……」
あっ、あん………あ、んた~
「あいかわらず感じやすいな~」
キスをしただけ
ただそれだけで
そこは溶けてしまうほどの熱をもち
すべての毛穴から愛液が滲みだしていた………。
流れる川を見ていると……
いや、もっと身近に、
水道の蛇口から流れる水を見ていると、
まるで一定のものであるかのように思える。
そこにある「水」は普遍のものであると錯覚する。
しかし、実際には、
今、目の前を流れた水と
これから流れ落ちる水は全く別であり、
その存在はその瞬間だけのものである。
“異なる同一”の連続によって保たれる普遍の姿。
例えば水、例えば風、例えば時間、
例えば……命。
流れるその瞬間を捉えれば、
それは二つとないその時だけの存在である。
静かで濃厚な時の流れ、
それをとり巻く自然の力
ごまかしの効かない時間の重さ
そしてそれをしなやかに受け取ることができた
______人の深さ。