今 3
「神納さん」
私は、錆びついたロボットのように首を上に向けた。ギシギシと音がしないのが不思議だ。
「お葬式、ちゃんと来るよね?」
おそうしき。ぼんやりとした頭で繰り返す。もしかしたら、声に出したかも。
分かんない。なんだっけ。……ああ、お葬式。人を、送る……人生最後のセレモニー。
……人生、最後の……。ああそっか、もう、いないんだ。人生、終わってるんだ。
最後もなにも、本人がいないんじゃ仕方ないのに。これが全部、ただの悪い冗談にならないかな。
今日って4月1日じゃ、ないんだっけ? 今、何月? もう分かんないや。もうどうでもいいや。
「神納さん。お葬式、来なきゃだめだよ」
栗源が普段よりも冷たい声で言った。冷たいっていうか……押し殺してるっていうか。
ああ分かるよ、押し殺すのいつもだから。今、私の周りは、涙で溢れていた。涙と、「可哀想」って言葉と。
こんな状況だけど、可哀想って言葉にイラッとする。それはもう、昔からの条件反射だったから。
可哀想ってなに、あんた何様? 普段なら勢いよく燃える怒りは、今日はすぐに消えてしまった。
悲しい、のか。私は。霧生がいなくなって、辛いのか。こんな、息が詰まるほどの感情って、いつぶりだろう。
今すぐ泣き叫べたら。今すぐ怒り狂えたなら。きっと、楽になれる。だけど……私の脳は、感情を受け付けない。
心? それは知らない。そもそもどこにあるのかも知らない。私がなにかを思うのは、感じるのは、すべて脳だから。
だから……この感情の出どころもきっと、ううん絶対、脳なんだ。




