過去 3
「はじめまして。霧生翼です。よろしく」
「はじめまして。神納由梨奈です。こちらこそ、よろしく」
あまり特徴のない女子だった。ブスでも美人でもない感じ。メガネだけが唯一の特徴か……?
いや、違う。最大の特徴は、表情が仮面みたいなこと。――大丈夫かな、神納さん。
自分の気持ちを殺すのって辛そうだ。俺に経験はないけど、絶対辛い。
「じゃあ趣味と特技と好きなものをお互いに言ってください。ついでに嫌いなものも」
俺からかな。……よし決まった。あ、でも……。
「えーっと……。難しいなこれ。神納さんから先にしてー」
なるべく、話しかけるか。普通に生きたいって思えるまで。顔から仮面が外れるまで。
どうしてかは分かってる。放っておけないからだ。お人好しだって弟には言われたけど、悪いことには思えない。
「えー……。……趣味は読書で、特技は将棋かな……好きなものは本で、嫌いなものはクモ」
なんとなく、嫌いなものはクモじゃないのかな? いや、クモも嫌いなんだろうけど。
「じゃ、霧生くんは? もう考えれた?」
「趣味はバスケで、特技はバスケで、好きなものはバスケで、嫌いなものは……つまんないもの?」
背は低いけど、小学校では4番だった。
いつかアメリカ行きたいな〜。ストリートバスケしたい。
「ざっくり! てかバスケばっか。どんだけ好きなの?」
仮面はさっきよりも笑っているものに変わった。たぶん本当の顔は、なにも感じていない無表情。
大人になれば、みんなそうなるのかもしれない。でもまだ、中学生なんだから……大人になったときのこととか考えなくていいじゃん。
能天気だって分かってる。だけど能天気になることって大事だと思う。分からなかったら聞けばいい。できなきゃ助けてもらえばいい。
人類が能天気になったら、助け合いとか簡単にできそうだ。発展はしなくなるかもだけど。
「兄ちゃん、学校どうだった?」
「面白そう。隣の席の人も……面白そう」
興味あるし、と言いかけて面白そうと言い直す。
ただ俺の弟は、予想よりもませていて、しかも鋭かった。
「一目惚れ? 面白そうって言い直したよね?」
お前まだ小4だろ……。最近の若者は、なんてジジイみたいなことを思う。




