過去 10
どうしようかな。ひどい、って言ってもいい。でも、ボス相手じゃ無理かな。さて、認めるか? でもそうすると、色々言われて肩身の狭い思いをするだろうし。そしてそういう風に振る舞わなきゃいけないし。
ここで私の味方をしてくれそうなのは、4、5人? あー足りないね。40人の中で4、5人か。人脈の作り方が甘かったな。反省反省。
「なんか言いなよ」
「ね、どうなの?」
「いるの? いないの?」
仕方ないから、いないよと言おうとした。その瞬間、声が割り込んだ。普段は朗らかでキラキラした声が、今は低くて少し怖い声だ。
「それ、楽しいのかよ」
霧生だ。少し、息がしやすくなる。……え、今まで息苦しかったの? なんで?
「わけ分かんねぇし。なんでそんなの根掘り葉掘り聞くの? 普通の人って言ってんだからいいだろ別に」
「興味あるだけだよ!」
「由梨奈ちゃんと仲よくなりたくて……!」
バカかこいつら。うんやっぱり、こいつらの精神年齢は低い。
「じゃあお前の父さんは? 仕事は? 性格は? 休みの日は? 顔は?」
目を合わせて言われた高田さんが黙り込む。うわ、責め方えげつな。霧生、そんなやつだっけ?
「バカじゃねぇの、お前ら」
私の出番ないなー、残念。まぁでも……助かった。まさか霧生に助けられるなんてね。
静まり返ったクラスが、徐々に騒がしさを取り戻す。たぶん、なかったことになるんだろう。表面的には。3人はいつの間にか消えていた。どっか行っちゃったね。そのまま帰ってこなきゃいいのに。
「だいじょーぶ? 神納さん」
「あんたこそ大丈夫? キャラ豹変してたけど」
「なんの話? 俺は優しく諭しただけだよ」
わぁ怖い。あれを諭したと言えるなんて。
「ま、あれはひどかったし」
「……とりあえず、ありがと」
「別に? 俺が見たくなかっただけだし」
なんでツンデレ発揮してんだ。てかそもそもツンデレ属性あったの? 全然知らなかったけど。
「ふ。あはははは」
思わず、笑い声が漏れた。笑おうと思ったわけじゃない。だけど……私は勝手に、笑っていた。
変だ。絶対、変だ。でも……今は、考えなくていいや。




