過去 5
約束(?)通り霧生はスタメンになった。上級生を押しのけて、だ。1年生でのスタメン入りは霧生だけだったらしい。嬉しそうに話していた。
「明日! 明日だよ遅刻しないでよ!」
うるさく繰り返す霧生に言い返す。
「一応学校と同じ扱いなんだから、遅刻なんかしない。あとうるさい」
全校応援は授業扱いだった。とはいえ、試合が終わったら帰っていいのだから楽な授業だ。応援する方は、だけど。
「バスケの応援、80人超えてるらしいよ」
入学以前から塾で会ったことのある女子、愛美がそう言った。彼女の雰囲気はとても落ち着く。こんないい人もいるってサンプルだ。
「へぇ、そんないるの? 確かに人多いね」
総体初日、第1回戦。相手は……同じくらいの実力のチーム。でも負けることはない。
「2回戦はどこと当たるかな」
「たぶんここ。で、次がここで……でもこの辺で負けるかな」
「詳しいね、由梨奈」
「ものすごく教え込まれたから」
授業中にも話しかけやがって。
「あ、いたよ由梨奈。霧生くん」
「ん? あ、ホントだ。さすが、ユニフォーム似合うね」
小学校からやってるって言ってたもんね。様になるよ、やっぱ。見た目だけはイケメンだし。見た目だけは。
「スリー入った! すごい!」
「スリー? ってなに?」
愛美はあまりバスケに詳しくない。マンガもあまり読まないし、スポーツもほとんどしないし。
「3ポイントシュート。あの線より外から入れたらスリーになる」
「へぇー。面白い。ちょっと勉強しようかな」
愛美のこの言葉は、かなりガチだ。たぶんすぐに私に追いつく。私もちゃんと勉強しとこ。
「このブザーは?」
ビーッかブーッか少し判断に悩むブザーが鳴った。
「第1Qが終わった。これから2分のインターバル。そのあと、第2Qの始まり」
「それぞれのクォーターって何分あるの?」
「各クォーターは8分。第2Qが終わったら10分のハーフタイム。で第3Q、インターバル、第4Qで終わり。これが高校とかプロの試合になるとクォーターは10分間になる」
なんて説明している間に、インターバルが終わる。第2Qの、始まりだ。




