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竹取の物語詩  作者: chro
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第一帖:序幕

 歴史に『もしも』は、ない。


 『もし』、あの時、彼がこうしていれば……。

 『もし』、この時、この事件が起こらなければ……。


 どんなにやり直したいと望んでも、違う結末を願っても、歴史は過去。

 時間の流れに逆行することはあり得ない。

 それが、世界が世界であるためのことわりである。

 歴史を変えることなど、けっして誰にもできない。


 だが……――。





 修平は何を見るともなく、ただ窓の外を眺めていた。


 下のグラウンドで飛び交う体育のクラスの声、上空に伸びる1本の飛行機雲。花粉症の鼻には正気の沙汰とは思えない地獄のぽかぽか陽気も、こうして教室の中にいると暖かく心地よい睡魔になる。

 子守唄のようにのんびりと話す先生の説明が、さらにいっそう眠気を誘う。いったい授業を聞けというのか、ゆっくりお休みなさいと言いたいのか、ただでさえ退屈な日本史を午後1番に持ってきた時点で、担任の意図も人間性も疑ってしまう。

 だからといって、昼ご飯直後の体育もどうかと思うが、とりあえず隣のクラスのサッカーは楽しそうだった。めまぐるしく動くボールを目で追っていると、サッカー部エースの血が騒ぐ。


 しかし、放課後までの道のりは遠く険しい。


「ふぁ……」


 あからさまに大きく口を開いても、もはやクラスの半分は目を開いていないし、先生も顔を上げることなく延々と教科書を読んでいるので、誰もそんなくらいでは気にならない。平安時代の政治うんぬんという説明を聞くともなく聞きながら、首が疲れてきた修平は涙目を窓から離して教科書に向けた。


「……?」


 何かが動いたような気がして、虫でもいるのかと目を凝らした。すると、先ほどまで退屈しのぎに見ていた資料集の絵――平安時代初期のページの端っこに書かれている『竹取物語』の挿絵が、かすかに淡く光っていた。


『シュウ……』


 どこからか小さなささやき声が聞こえ、瞬きをした瞬間、月を見上げている絵の美しい女性がふり返り、確かに目が合った。そして突然、本から光があふれて爆発し、修平は目を閉じる間もなく光の渦に飲み込まれた。





 ――だが、歴史を変えるのではなく。


 『もしも』、歴史そのものが違っていたとすれば……。

 『もしも』、過去によって未来が書き換えられていたとすれば……。


 世界の理は、1人の少年の手にゆだねられてしまったのかも、しれない。



一人称が懐かしくなって、また新しい物語を始めてしまいました。

chro初の(ちょっとおかしな)日本舞台、漢字名(呼び名はやっぱりカタカナ)主人公、そして初のコメディ(を目指す)物語です。

どうぞ、寛大な心でお付き合いくださいませ。


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