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~~予想外の結末~~



 痩せた狼は、俺達を見つめたまま動かない。それは、どちらを先に仕留めるか迷っているようだった。


「そ、そんな…あれは、厄災狼ディザスター・ウルフ!?」


 狼を見たルミリアが、恐怖と絶望でへたり込む。そして、その動きに反応したのか狙いをルミリアに定めて跳びかかって来る。


「ルミリアッ!?」

「ッ!?」


 俺は、咄嗟にルミリアを突き飛ばして自分の右腕を狼に噛ませた。


「ぐぁッ」

「グルルルゥ」


 噛まれた痛みに、思わず声が漏れてしまった。それに気づいたルミリアが、噛まれた俺を目にして悲鳴を上げそうになり慌てて自分の口を塞ぐ。


(あれ?…おかしいな、サイズの割には力が弱過ぎる。ルミリアの反応から、俺程度なら一撃で殺せるはず…)


 違和感を感じ、痛みに耐えながら狼を注意深く観察する。


(ん?…息が荒くて、衰弱が著しい?…あと、痩せているのに腹が大きい?…まさか!?)


 それに気づいてすぐ、狼が俺の右腕を離しその場に横たわり、弱々しく悲鳴を上げ始めた。


「これは…ヒロト様が何かされたのですか?」

「いや、俺は何もしてない。多分だけど、この狼は、子供が産まれそうなんだと思う。だから、俺達を襲ったのも…この場所の安全を確保するためじゃないかな…」

(でも、この痩せた躰と衰弱具合だと…それに、子供にも影響が出ていたっておかしくはないだろうな…)



~~三時間後~~



 コアルームには、二つの小さな鳴き声が上がっていた。


「ヒロト様…その子たちはどうするんですか?」


 俺が抱えたジャージを見て、複雑な表情を浮かべながら質問してきたルミリア。


「…育てるよ」


 そう言って、地面に視線を下げる。そこには、事切れた狼が三頭並んでいる。一頭は、ここを襲った親狼。後の二頭は、その子供だった。産まれた子供は、全部で四頭だったが内二頭は死産だった…


「わかりました…ですが、気をつけて下さい。その子たちは、どちらもAランクモンスター【厄災狼】の“特殊個体”です。外部に情報が漏れれば、確実に討伐隊が差し向けられてしまいますので」


 俺が抱えているジャージの中には、産まれたばかりの兄妹狼がいる。そして、“特殊個体”については兄狼が産まれたときに教えてもらった。


(“特殊個体”は、通常の個体には無い身体的特徴を備えており、成長するにつれ知能が向上し、独自の進化を遂げることがある。その為、どのランクであっても、存在が確認された際は討伐隊を編成し速やかに駆除すること…だったよな…)


 俺が、教えてもらったことを思い出しながら確認していると、噛まれた右腕(既にルミリアの治癒魔法で回復済み)に手を添えられた。


「私のせいで…ヒロト様に【厄災狼】の呪いを負わせてしまい申し訳ございませんでした…」


 本来なら、【厄災狼】は群れで行動し縄張りから離れることは無いらしい。また、厄災と名付けられAランク認定されている理由の一つがスキル【死を告げる刻印】で、噛み付いた所から痣が広がり全身に回ると死に至るという呪いとのこと。これは、最高位治癒魔法の【聖なる息吹】しか解く方法がないそうだ。


「そんなに気にしないでいいよ?何故だかわからないけど、近いうちに解決しそうな気がするんだよね…本当に、何故だかわからないけど…」

「そう…なんですか?」


 俺は頷いて返し、子供達が包まれているジャージをルミリアに預ける。そして、ポケットから端末を取り出して操作し、三頭の亡骸をDPに変換した。


(まずは、コアルームの前に大きめの部屋を造って…)



~~一時間後~~



「ふは~気持ち良いわ~」


 俺は今、大浴場で湯に浸かっている。もちろん、DPで造ったものだ。取得したDPは5600で、5000DP(居住区3000/迷宮区2000)消費してダンジョンを造りあげた。


「とりあえず、明日から早朝ジョギングと木刀で素振りだな」


 入浴を終えてリビングに戻ると、濡れた髪をタオルで拭いている色っぽいルミリアがいて少し見入ってしまった。


「…ドライヤーは使わなかったのか?」

「ドライヤー?」


 その反応で、自分のミスに気づいた。


「ごめん、ちゃんと教えてから入るべきだった」

「???」


 それから、ドライヤーを取ってきて一通り説明して、実際に使ってもらった。


「この魔道具は、髪を乾かすために置いてあったんですね。恥ずかしながら、私には何に使うの物なのかわかりませんでした」

「この世界には無い物みたいだし、知らなくて当たり前だから…寧ろ、それに気づかなかった俺の方が恥ずかしい…」


『ギューッ、ギューッ、ギューッ』


 今まで、静かに寝ていた子供達が起きてしまったらしい。ちなみに、ダンジョンを完成させてからDPでペット用ミルクを出して飲ませていたのだが、またお腹が減って目が覚めたようだ。


「ミルク、温めるから待ってろよ~」


 俺は、キッチンへ駆け込みペット用ミルクを温めだすのだった。



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