~~緊急事態~~
「よし…【迷宮核生成】」
スキルを使用する意思を持って、スキル名を唱えた。すると、目の前に浮遊するソフトボールくらいの透明な水晶玉が現れた。
「まあ、こんなに美しいコアは初めて見ました」
「そうなんですか?俺の中では、ダンジョンのコアといえばコレなんですが?」
そう言って、俺は浮遊しているコアを手に取る。
「私の知る限り、他のコアはどれも角張っていて禍々しい色の物ばかりです。あと、私事ですが普段通りの態度で接してほしいです」
彼女…ルミリアの悲しそうな表情を見て、俺は身分を気にすることを辞め、普段通りの態度で接することにした。
「わかったよ…ルミリア」
そう言った途端、幸せそうな表情を浮かべて、立ったまま気絶した。
「…さっさと進めてしまおう…【迷宮核操作】」
気絶したルミリアは放置することにして、スキルを使用すると、コアを持つ手に『バチッ』と静電気のようなものが発生して、水晶玉からスマホのような端末が出て来た。
(スマホ?…って、何で水晶玉から出て来たの!?)
とりあえず端末を持って確認すると、画面に『この空間を迷宮化しています』と表示されていた。
~~一時間後~~
俺は膝を交えて落ち込み、侵入者アラート(ルミリアがコアルーム内に居たため)によって目を覚ましていたルミリアに励まされていた。ちなみに、アラートはルミリアをゲスト認定したら止まった。
「だ、大丈夫ですよ、ヒロト様ならすぐに解決できますよ」
何故、こんな状況になっているかというと、俺達…いや、俺は、ダンジョン運営モノにおいてとても重要な存在を失念していた。
「非戦闘員並みの俺が、DPなんてホイホイ貯めれるわけないじゃん…」
そう、俺が失念していたのはDPだ。部屋や通路を造ったり、罠の設置やモンスターの召喚等々、ダンジョンを運営する者にとってDPの有る無しが生死に直結するほど重要なモノなのだ。しかし、俺のコアは生成したばかりでDPが0だった。しかも、洞穴でコアを起動したため、コアルームのみのダンジョンといえないダンジョンが出来上がっていた。内装も、中央にできたコア用台座以外は元の洞穴のままで外から丸見えという有様だ。
「ヒロト様、これ以上は落ち込んでいても時間の無駄です。二人で、今できることを『ビィィーーー』」
突然、二度目のアラートが鳴り響く。すぐに、入り口へ顔を向けると…ヒグマサイズの痩せた狼が一頭、俺達を見つめていた…