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天使の梯子   作者: 柊木叶葉
3/10

天使の梯子: Ⅱ 開店

 朝、和弥が目覚めると、ふと懐かしい匂いが鼻につく。居住スペースの三階から二階に降りていくと、リエが台所で料理を作っていた。戦闘特化型じゃなかったのか、と軽く驚いているとその気配を察し、

「おはようございます、昨日はよく眠れましたか?」

 と挨拶をしてくる。

「おはよう、うん…ぐっすり寝すぎてよく覚えてないくらいなんだけど…昨日はあの後ファミレスに行ったんだっけ?」

 リエのおすすめの店がファミレスなことに驚いたが、ふんぞり返って、「コウヤに教わりました!」なんて言われると何も言えなくなってしまったのだった。

「そうだ、今料理を作ってるみたいだけど、それも親父じこみ?」

「はい、家庭の味というものの味の再現にはなかなか苦労しましたが……」

 苦笑しながらリエは言った。懐かしい匂いがしたことに納得がいく。

「準備が出来たので、運んでください」

 と言われ、皿を運びリエとご飯を食べている時、和弥は、ふと気になって、

「口から食べられるんだね」

 という質問をした。

「ええ、栄養の経口摂取は可能ですよ、ただ不要物の排泄が不可欠ですが…」

 と若干補足し過ぎなまでの説明を返された。

「ただ、コウヤがいない間のように、電気からの状態維持も可能です。」

 あの階段の下の暗い部屋にいたのはそういうことだったのか……。

 ――暗い部屋?

 その言葉にひっかかる。

「あの階段の下の部屋はなんだったんだ?」

「あぁ、あれは武器庫です。」

 サラリと吐かれたリエのセリフに一瞬唖然としたが、これからする仕事を思えば不思議はないことだった。

「まだ開店まで時間があるので、案内しましょう。」

 と言って、食器を片付けるとあの階段へ歩き出す。和弥も堪忍しておとなしくついていく。


 例の重厚な扉を開けると、そこには表のロードバイクショップと同じくらいの空間が広がっていた。銃器や弾丸、一見してどう使うのかわからないものまで雑多に置かれている。よく見ると値札がついていた。

「値札がついてるよ……?」

 和弥が気になって聞いてみると、リエは、

「…えぇ、それらは売り物でもあるのですよ。この店に来る客は、大体がこれ目当てに来るといっても過言ではありません。」

 と言った。昨日口ごもった理由に得心が言ったが、同時に客層への不安も覚えた。

「さ、さあもう開店です。店を開けましょう!」

 とリエが会話を切り上げる。一抹の不安を覚えながらも、時計の針は開店時間の10時に迫っていたので、表の店の鍵を開け、プレートをオープンにひっくり返した。


 ……10分後、客の来店を告げるベルがなり、入ってきたのはロードバイクにも銃器にも縁がなさそうな、お嬢様然とした一人の少女であった。


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