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天使の梯子   作者: 柊木叶葉
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天使の梯子 : Ⅸ すべての真実

 翌朝、あかねは目が覚めるとデスクトップを立ち上げてこの島で起こったニュースを確認した。


 スクロールしていくと、『小規模経営していた探偵事務所全員が惨殺される』という記事で目が止まる。こんなことはこの島ではざらなことだし珍しくともなんともない。でも頭にふと浮かんだのは和弥が最後に見せた笑顔だった。……記事を開く。


『昨夜未明、(さかき)西地区で先島探偵事務所の職員、約10名が惨殺されているのが発見された。「近所で血にまみれた男女が走っていた。」「女は身長が140cmぐらいの少女だった。」などの目撃証言から警察は容疑者を捜索中している。』


 ……手が震える。いやまさか、そんなはずはない…と思いながらもその探偵事務所について調べ始めた。

 アクセスして内部事情を見ようとするが、セキュリティが異様に固い。ハッカーの勘が何かあるぞ、と告げる。


 持てる技術を駆使してセキュリティを突破していくと、先島総悟という名前が出てきた。クライアントではないか……何故こんなところに…と思って、今度は従業員のデータを解析し始めた。


 いきなり『WARNING』という文字が躍り出た。ビンゴだ、と耳元で悪魔が囁く。セキュリティを解除しにかかる。30分後、従業員のデータが表示された。それを見て衝撃を受ける。全員外国人の傭兵やスパイだった。


 これは先島が会社のために用意したのか?少し異常な気もするが、ありえないわけではない。なにしろここは軍事企業城下町であるのだから。そうなると和弥達は何故(なぜ)全員を手にかけたのだろう。


 和弥との時間を振り返る。思えば、最初の任務で何故危険を冒してまでデータをとったのだろう……


 ハッと思い当たる節があって、和弥から受け取った情報データを解析し直した。最初見た時は気付かなかったが明らかにデータが欠陥している部分がある。


 データを急いで復旧すると、そこには探偵事務所のデータが入っていた。震える指でスクロールしていくと、最後に衝撃の事実が書かれていた。


『先島がスパイだ。色々な施設に自分の手下を連れ込んで技術だけでなく金も海外に横流ししている。その一部データを載せる。これが流出すれば間違いなく消されるだろう。……』


 そこから先が最初にあかねが見た資料内容だったのだ。殺した後知った和弥はどう思ったのだろうか…これを私には知らせたくなかったのか…さまざまな思いが駆け巡った。ふと思った。二つ目の仕事の時もデータを抜き取ったのだろうか…


 工場のコードにアクセスしてハッキングを開始した。それを見た時、頬に一筋の涙が頬をつたうのを感じた。


 それは弟のことだった……実際、あかねはこの仕事を楽しいと感じたことが和弥と仕事をするまで一度もなかった…でもやっていたのはひとえに病気の弟を人質にされていたからだった。まさか…これを見て…いてもたってもいられなくなって、和弥の店で買ったロードバイクで家を飛び出す。


 --果たして和弥達は荷物をまとめていた。急いで店に駆け込む。和弥が驚いてその後直ぐに寂しそうな顔になると、

「あかねさんは耳がはやいな…出来れば知られたくなかったんだけど…」

「なんでッ…どうしてッ…」

 和弥は諦観(ていかん)したような表情になる。

「どうして私を巻き込んでくれなかったの…?!」

「え……?」

 すっかり、味方を大量虐殺した事を責められる覚悟をしていた和弥は少したじろく。

「だってッ…データ消してたじゃないッ!」

 和弥は驚きながらも、

「そこまでバレちゃったんだ」

 と少しはにかみながら言った。あかねになら全部話せる、と思った和弥はリエに目で合図を送った。全てを悟った様にうなずき返される。


 和弥はポツポツと語り始めた。

「僕の目的は最初から先島の悪事の証拠を暴いて、無力化することだったんだ。僕達に暗殺を依頼された人たちは皆 先島の悪事を暴こうとしていた…」


「そもそも和弥は殺してしまった後に気が付きましたが…」とリエが補足する。


「うん…そんなことは君に知られたくなかった。それから証拠を見つけた後に、先島の手足だった外国人を消す計画を立て始めた。でも恐らくあのデータを持ち帰った時に不審に思われた可能性もあった、だけど先島はまんまと僕らと専属契約をしたんだ。当初はあかねも巻き込む予定だった。二つ目の証拠を見つけるまでは…」


「私の弟のことね…」


「なんだ、そこまで知られてたのか…そう、君の弟が先島の手中にあると分かって君を巻き込むわけにはいかなくなった。僕らが失敗する可能性もあったからね…そこで、一番警戒が少なくなる任務決行直後に襲撃することにした。」


「ちょっと待って!じゃあ二人目は無罪って分かってて殺したの?」


「いやまさか、リエにはちゃんと'社長じゃない方'を狙撃してくれって頼んでたからね、社長は今頃どこかの病院で匿われてるだろう。リエ、協力者はどんな顔立ちだった?」


「はい、アジア系でしたが日本ではありませんでした、恐らく漢民族系だと思われます。」


「貴方は…誰の命令で動いていたの……?」


「そこはまだバレてなかったんだ、君と初めて会ったとき言いかけたんだけど…」


「わだ…」

 何故か脳裏に記憶が蘇る。

「まさか…」


「すごい記憶力だ、そう、榊コーポレーション代表取締役 和田秋良だ。彼は僕の伯父にあたる人なんだ」


「つまり伯父直々に会社の内部洗浄を依頼されたんだ。これが終わったら正式に雇ってもらえるっていう条件でね」


「そうだ…君はこの後どうするんだい?」

 あかねは呆然と聞いていたので突然の質問にあわてふためく。


「わ、私?そんな…どうしょうもないわよ、今までと同じように殺し屋の手伝いで生きていくしかッ…」

 それを見て和弥は恥ずかしそうにしながら、


「なら僕とパートナーを組んで仕事をしてくれないか?」

 不意に涙が零れた。それを見て急に和弥は愛おしく感じて思わず抱きすくめていた。


「君と過ごした時間は、何故かとても色付いていたし楽しかった。もし君が事実に気付かなかったら僕は君の中で一生悪者になるんだって思ったらすごく悲しくなった。」


「……ありがとう」

 精一杯に言葉を絞り出したが、これがあかねの限界だった。


 少し時間が経って和弥はあかねを離すと、少しだけ目を赤くしながら言った。


「改めて自己紹介しよう、和田和弥だ、よろしく」


 ふたりを見守るように窓の外では今年の初雪が降り始めていた。


読んでくださってありがこうございました!

自分にとっては初めて書いた小説で、テンプレでもないので不安でしたが、思いのほか多くの読者様に読んで頂き感無量です。この話の続編はそのうち書くかも知れませんが、暫くはもう一つの作品をかき勧めたいと思います。本当にありがとうございました!


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