表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2部完結】かつての剣聖、死んだら宿敵の娘に転生してしまった 〜パパが世界最強の親バカすぎて復讐どころか修行もままなりません〜  作者: ぱすた屋さん
第二章:「最強の姉弟愛」と「勘違いだらけの学園生活編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/76

第十八話:粛清!不敬な噂は即座に消える!?



 王立アカデミーという場所は、どうやら私が考えていたよりもずっと、「想像力」に欠けた方々の集まりだったようですわ。


 入学式での威圧、そして魔導実習でのゴーレム消失。あれだけのものを見せつければ、賢明な者ならば「この獲物には触れてはならない」と本能で理解するものですが――どうやら、自身の家柄やちっぽけなプライドという名の「目隠し」を外せない愚か者が、数名は紛れ込んでいたようです。


「――ねえ、聞いた? ハルトマン家の令嬢、あれは全部『仕込み』なんですって」

「そうに決まっているわ。いくらなんでも、十二歳の小娘があんな芸当できるはずがないもの。きっと、お父様の騎士団や、お母様の魔導具を使って、周りを脅しているだけよ」


 中庭に続く回廊を歩いていた私の耳に、柱の影からそんな卑俗な囁きが届きました。

 かつての私、剣聖アルスであれば、そのような雑音は一振りの風で吹き飛ばして終わらせたことでしょう。しかし、今の私はリリア・ハルトマン。淑女たるもの、背後からの誹謗中傷には、それ相応の「丁寧な返礼」を差し上げねばなりません。


(……やれやれ。私の実力を疑うのは勝手ですが、お父様やお母様の名前を汚すのは、万死に値しますわね。何より、そんな不潔な噂が風に乗って領地まで届き、テオの清らかな耳を汚してしまったら……。ああ、想像しただけで吐き気がいたしますわ)


 私が足を止め、静かに振り返ろうとしたその時。

 背後から、凍てつくような、しかしどこか熱狂を孕んだ「殺気」が噴き出しました。


「……今、どなたが『仕込み』と仰いましたかしら?」


 鈴を転がすような、しかし地獄の底から響くような声。

 アイリス・バルガスが、私の影から音もなく踏み出しました。彼女の瞳はハイライトが消え、狂信的なまでの怒りで濁っています。


「ひ、ひいっ!? アイリス・バルガス……っ!」

「リリア様の聖なる御業を、あのような低俗なトリックと混同するとは……。貴方たちの脳髄は、家畜の餌にさえ劣るゴミが詰まっているようですね。……安心してください。その汚れた舌ごと、私が『清掃』して差し上げますわ」


 アイリスの手には、いつの間にか細い銀の針が握られていました。彼女はバルガス家の令嬢でありながら、私への心酔が高じるあまり、最近では「リリア様の敵を音もなく排除するための暗殺術」を独学で極めつつあるようです。


「待ちたまえ、アイリス。暴力は美しくないよ」


 反対側の角から現れたのは、読書をしていたはずの次兄カイルでした。彼は本を閉じると、眼鏡の縁を光らせて、震え上がる生徒たちを見下ろしました。


「カイル兄様……。貴方まで」


「リリア、君の手を汚す必要はない。……さて、ヴァレンティ家の分家の方々と、クロムウェル家の遠縁の方々かな? 君たちの家が王都で営んでいる商会の帳簿、少しだけ調べさせてもらったけれど。……随分と面白い『不備』が山積みだったよ。今夜中には、王立徴税官の手入れが入るように手配しておいた。明日には、君たちの学費を払える親族はいなくなっているはずだ」


 カイル兄様は、死刑宣告を告げる執行人のような淡々とした口調で続けました。

 これこそが、魔導科の秀才にしてハルトマン家の知恵袋である兄の「粛清」です。物理的な破壊ではなく、社会的な抹殺。彼はリリアに害をなす可能性のある芽を、一族ごと根絶やしにすることに何の躊躇もありません。


「そ、そんな……! お願いです、お許しを……っ!」

「冗談よ、ただの冗談だったのよぉっ!」


 先程まで高慢な態度をとっていた生徒たちが、その場に泣き崩れました。

 しかし、彼女たちの目の前に、私が一歩踏み出した瞬間。

 

 ――ッ!!


 世界から音が消えました。

 私が放ったのは、殺意ですらありません。ただ、彼女たちの存在そのものを「不要」と断じる、圧倒的な存在の重圧。


 ミシミシ、と。

 回廊の石床に、私の歩みに合わせて放射状の亀裂が走ります。

 彼女たちの視界は、もはや私の紫の瞳に支配され、呼吸の仕方も、心臓の動かし方も、すべてが私の掌の上にあることを本能で理解させられたはずです。


「……皆様。一つだけ、忠告しておきますわね」


 私は、泣き叫ぶことさえできずに硬直している彼女たちの耳元で、優しく囁きました。


「私は、私への無礼はいくらでも許しましょう。……ですが、私の愛する家族。お父様、お母様、兄様たち。そして――私の命よりも大切な弟、テオドールの平穏を乱すような真似だけは、決してなさらないことね」


 私は、彼女たちの喉元に「見えない刃」を突き立てるような幻覚を見せるほどのプレッシャーを叩き込みました。

 

「もし、次があれば。……貴方たちの家名だけでなく、その血の一滴に至るまで、この世界から『なかったこと』にさせていただきますわ。……お分かりいただけて?」


「…………っ、……っ!!」


 返事はありませんでした。

 彼女たちは、恐怖のあまり失禁し、そのまま白目を剥いて石畳の上に崩れ落ちたからです。


「……ふぅ。少々、言葉が過ぎてしまいましたかしら」


 私はすぐに圧力を収束させ、扇で口元を隠して優雅に微笑みました。

 

「リリア様、流石でございますわ! あの虫ケラども、魂が砕け散る音が聞こえましたわ!」

「リリア、少しやりすぎだよ。あそこまで精神を壊してしまったら、徴税官の取り調べに支障が出るじゃないか」


 アイリスとカイル兄様が、当然のような顔で追従してきます。

 廊下を通りかかった他の生徒たちは、泡を吹いて倒れている連中と、その中央で何事もなかったかのように微笑む私を見て、一斉に背を向けて逃げ出していきました。


 これでいいのです。

 学園という狭い社会において、「噂」は毒にも薬にもなります。

 ならば、私に関する噂はすべて「逆らえば破滅する」という絶対の恐怖で塗り替えてしまえば良い。それが、私の愛するテオが将来この学園に来たとき、誰もが彼の前で頭を垂れるための最も確実な「道普請」なのですから。


「アイリス。あの方々の後始末……いえ、お掃除をお願いしてよろしいかしら? 廊下が汚れていては、淑女の散歩に相応しくありませんわ」


「御意にございます、リリア様! 記憶処理も含め、完璧に塵一つ残さず抹消いたしますわ!」


 アイリスが不気味な笑みを浮かべて動き出すのを見届け、私は兄様と共に、再び優雅な足取りで歩き始めました。


 部屋に戻れば、テオへの四通目の手紙が待っています。

 

(テオ、元気ですか。今日もお姉様は、学園の環境を整えるために少しだけお仕事をしましたわ。みんな、お姉様に憧れて(?)腰を抜かすほど驚いてくれる、とても賑やかなところですよ。早く、あなたにこの平和な景色を見せてあげたいですわ……)


 窓の外に広がる王都の景色。

 そこには、不敬な噂など微塵も存在しない、死のような静寂に満ちた「平穏」が、私の足元から確実に広がり始めていたのでした。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


本作を応援してくださる方は、ぜひブックマークや下の評価【☆☆☆☆☆】をいただけますと幸いです。


次回お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ