追及・終窮
出張の回数は次第に増えていく、それも一度潜入した国へも幾度か向かった。もはや賀時は「戦争の兆候があるから真偽を…」ではなく「なにかいい文化を持ち帰って…」という風に趣旨がずれてきているように感じる。ある時は毒動物を漬け込んだ酒を持ち帰ったこともあった、その時は微妙な反応を見せていたが、またある時に芝刈り機を持ち帰った時はものすごく興味津々だった。
私も12回目以降からは回数を数えていないが、4回目の百碌への出張で、私は「スマートフォンを持ち帰ろうか?」と連絡した。スマートフォンは私達の国で広く使われている連絡ツールとは一線を画していた。他国の情報を簡単に知れたり、気になることを辞書なしで調べることができたりとこれ以上に便利なツールはないだろうと感じていた。
しかしその許可は下りなかった。いくら理由を尋ねても「帰ったら話す」の一点張りだった。大人しく常駐している悪の話を手土産にすることにした私は、今いる場所を離れて早速そこへ突撃した。
この国の主な稼ぎ口は賭博で、借金を負うものが多いのだとか。その結果、彼女らは国の債務者にひどく恐れられている。
一方の私は恐れることもなく堂々とビルをエレベーターで上がった。エレベーターのドアが開き、扉が現れる。扉を開けば、堂々と最奥に座する二人を直視できた。
私は話しかける。
「久しぶりですね、お仕事順調ですか?」
「んー♪最近は手加減に慣れてきたから大丈夫かな。やっぱり殺してはいけないなんてきつすぎるわ!前だって死神だの金むしり悪魔だのゴリラだの言われて、めっちゃムカついたから手加減なしでぶっ飛ばそうと思ったんだよね、そもそも科牙がいるのよ?うちでも少なかったヒーラーよ!?どうせ蘇らせれば同じなのに殺しちゃダメなんて馬鹿げているわ。」
隣でにこやかにピースをしている科牙を少し恐ろしく感じた。
一応、仕事の待遇についての質問もしたが、特にないとのことだった。
私は帰還してこれを賀時に伝え、本題のスマートフォン導入を断った理由を尋ねた。
「なんのこと?」
はぐらかす賀時、追及する私。結局いたちごっこになってしまった。しびれを切らすまでに1時間も使わないだろう、そう考えていた私はそのいたちごっこを続け、現在4時間も経った。周りの従業員は帰り、ビル内の人間は二人だけになってしまった。
時間が来た、と答えを聞き出せずに私は家へ送還された。母親は寝ずにただ椅子にすわっていただけだった。時刻は1:00で普段なら父さんも母親も、勿論私も眠っている時間だった。
珍しく起きている母親に私も珍しく話しかけた。
「母さん、どうしてこんな夜に起きているの?」
「もちろん待っていたに決まっているじゃない。」
さっきまで仕事へ向いていた注意が母親に向いた。その途端、腹の鳴る音が聞こえてきた。私のものではない。私は聞いた。
「晩御飯はもう食べたよね?」
「いいや、まだだよ。だから言ってるじゃない、待ってたって。お茶を飲んで空腹を紛らわすくらいしかしていない。それで、今日は蕎麦なの。あんたの部屋にレシピがあったから作るんだよ?今から麺を茹でるから今のうちに着替えてきなさい。」
何を言っているのかはよくわからなかったが、私は部屋へ行き、着替えた。食事部屋へ戻れば、母親は[できた」その言葉とともにそばを盛り付けた。
テーブルには二食分の蕎麦が置いてある。私が椅子に座って、合掌すれば母親はそれに合わせて合掌した。そこからは静かな食卓があるのみ。それでも私が食べ終わるまでは母親も席を立たずに時間が流れていった。私はそばを食べ終わって言った。
「美味しかった。御衣で初めて食べた蕎麦よりも、断然に。」
それを聞いて、突如母親は語りだした。
「初めに聞いたとき、所属なしで職に就いたなんて冗談だと思っていたよ、でもあんたがあの時からずっと帰りが遅いのは気になっていた。最初は夜遊びか何かだと思って拒絶していたよ。拒絶していたんだけど、だんだんそれが意地になってた。非選択者が職になんて就けない、手の込んだ悪戯だと。でも最近は家に帰らない日が増えた。たまに帰ってきたと思えば私達に一言も言わず、すぐに自分の部屋へ行っていた。ここでやっと気づいたの。本当に就職しているんだって。あの時のこと、これまでの態度を謝ろうと思って、毎日12:00まで待っていた。それでも会えない日ばかりだった。でも今日は、1:00まで起きてみたの、そしたら一緒に晩御飯を食べられた。言わせて、あんなそっけなくして、愛なく接しててごめんね。こんな母を許して、なんてことは言わない。許さなくてもいい、けれどたまには一緒にご飯を食べて話さない?昔のように。」
私は母を許した。これまでなんてどうでもいい、後先も考えない。
「もちろん。」
読んでいただきありがとうございます!!
昨日サボった分、今日は頭が回りました。
本当に結末何にしよう




