不知出勤
帰された先がビルの前だったので、まだ仕事時間中だった私はとぼとぼと部署へと戻った。
部屋に入ると温かく迎えられると思っていたのだが、完全な思い上がりだったようだ。すこし下がった気分で机に戻った。机上には朝と同じように紙が置かれていた。
・会議から帰ってきたら報告書を書いてください。(手引書P74~79参照)
・定時までは他の国から欲しい設備,技術を調べて時間をつぶしておいてください。
・この国の実情については手引書の第1章,第3章を事前に閲覧していただき、会議前には知っておいてもらうべきでした。すまないね(_〇_)
紙を読んで、「迷惑を掛ける訳にはいかないから、今日は手引書を徹夜で読み込もう」その覚悟が己に芽生えた。
仕事を着々と済ませ、定時になったので「ありがとうございました。」と言ってすぐに帰った。帰宅後、家の中ではこれまでにないほどにわくわくしていた。
翌日、またビルを訪れた。気のせいかもしれないが、今日のここは昨日までよりも静かである。人数も少なく見える。ビルに入り、受付の人と目が合った。そして受付はたいそう驚いた顔で私を見つめて言った。
「左さんですよね?新入りの。今日は休んでも良い日なのにも関わらずいらしたのですか。ものすごい気力ですね、うらやましい限りです。本日はB,C,D,Eサイドは稼業中ですが、あなたの所属しているAサイドは休業中ですね。つまり、手伝い手として進んで来られたのですか?それならば回生部署の方へお願いします、蘇生者が足りていなかったので行っていただければ助かります。」
私が来た理由は休業を知らなかったというだけなのだが、この話を持ち出された以上否定をすることは私の頭が許さなかった。
そうして私はあの回生部署へ向かい、その部屋に降り立った。相も変わらずアーモンドの香りが充満し、報告の言葉しか聞こえてこなかった。
蘇生方法は秘密裏に国の地下で栽培している"コリゥアメンドラ"を砕いたときに出る汁を指につけ、その死者の魂に付着させることであると書いていた。ちなみに汁は痛みにも近い辛味のあとにそれを上回る強烈な甘味が来るということも書かれていた。
私は装備として霊視可能なゴーグルをつけ、いざ仕事へと入った。
そこから先は一心不乱に実を砕き蘇生作業をした。この仕事をやってよくわかったのは、死人が多いことと動きが腰に来ることだ。普段では絶対にしないであろう動きを8時間続けた。少し気になったことは、定時後に出た死人はどうするのか、ということである。そしてその答えはすぐにわかった。
「左さ~ん、どうしてゴーグルを外したの~?」
ははは。
「今が17時だからです。」
「17時がどうしたの?」
今度はさっきとは違う可愛げな声でそう言われた。それに私は丁寧な言葉で返した。
「17時はこの仕事の定時ですので、帰らせていただこうという所存です。」
「定時ぃ~?」
その言葉がトリガーとなり、何の因果か私の目にゴーグルがかけられた。
「定時は24時でしょう?あは、あはは。…続けてください、お仕事。」
結果、晩御飯も朝ごはんのような軽さとなり、24時を迎えた時には、腹を大きく鳴らしていた。
その後、17時に帰るのを止めてきた人のおごりで飲みへ行き、家に着いたのは翌日の2時30分のことだった。
そこで聞いた話によると、あの人たちはBサイドの方々で昨日の0時から働いていたらしい。あの仕事が辛いのは身に染みてわかったことだ。24時間それを行うのは気が狂いそうだと私は共感した。
寝る前、一通の連絡が私のスマホへとやってきた。そして、その差出は「がじゅまる」である。
失敗を繰り返さぬようにと私はすぐにそれを開いた。
[今日、仕事へ来ていたようだね。休みのことを伝えるのを忘れていたよ、私の失敗だ。許してくれ(_〇_)それはそうと、詳しいことを一度も伝えていなかったから、取り敢えず分をここに書いておくよ。]
以降は4つのことが記されていた。
まずは、6日行って3日休む完全週休三日制であること。
次に、休みの日に仕事に行けば別のチームへの手伝いができること。(給料は出る)
最後に、皆A,B,C,D,Eのいずれかのサイドに属していて交互に働いていること。
そして、この3つがシンプルに絡み、この国は成り立っているのだということ。
「最後のやついる?」
一人だけの空間でそう呟いた。
読んでいただきありがとうございます!!!!!
2倍はきつかった…。
[1000-2000]に変えますね。




