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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第一章

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第7話 新たな仲間たち

(そろそろ、充分かな)


 その日の早朝――カイトは石室内のコアに触れながら思考を巡らせていた。

 そこには魔力が渦巻いている。どれだけ溜まっているかは定量化することはできないが、感覚的にこの魔力でどれくらい魔獣が召喚できるかが分かる。

 ここ数日、こつこつと獣を罠で狩り、それらを魔力に変換して蓄えてきた甲斐だろう。


(それに――)


 視線を傍に控える少女に向ける。フィアはカイトの視線に気づくと、にこりと微笑みながら真っ直ぐに見つめる。その真っ赤な瞳は揺らぐことがない。

 短い期間だが、フィアとも仲を深めることができている。

 少なくとも、彼女はカイトが主たるに相応しいと認めてくれているのだろう。最近は彼の頼み事に二つ返事で引き受け、やる気を出して取り組んでくれる。

 それが地味な仕事であっても、詳しい目的を聞かずに働いてくれるのだ。

 彼女との信頼関係についても、充分培われたと感じられた。

 だからこそ、カイトは心に決めて告げる。


「フィア――そろそろ、仲間を増やそうか」

「魔獣の召喚、ですね」


 きりり、と表情を引き締めて頷くフィア。カイトは軽く頷いて認めながら言葉を続ける。


「もちろん、この魔力をフィアに与えて強化することもできる。だけど、今後の開発のことを考えると、人手を増やしていきたい」

「はい、仰る通りだと思います。私の強化は余裕ができてからで構いませんので」

「ありがとう、フィア。楽しみにしていてくれ」

「ふふっ、はいっ」


 フィアはカイトの言葉に嬉しそうに笑ってくれる。その笑顔は可憐であり、親しみが込められていて――少しだけ、カイトはその笑顔に見とれてしまう。


(……こんな子が、魔獣だとはな……)


 無論、理解している。小さな身体でありながら、易々と大岩を持ち上げる膂力を見せるのだから。それだけに、この可愛らしい一面に胸が揺さぶられてしまう。

 実際、カイトがこのサバイバル生活でモチベーションを保てているのは、傍に明るく笑ってくれる彼女がいてくれることも一因だ。一緒に作業をしていて楽しいし、無邪気な笑顔を見るとやる気も出てくるのだから。


「――カイト様?」


 フィアの声で我に返る。彼女が不思議そうに首を傾げているのを見て、カイトは何でもない、と手を振ってごまかし、話題を変える。


「そういえば、フィアもダンジョンコアによって召喚された魔獣なんだよな」

「はい、そうですね」


 フィアはこくんと頷き、カイトに向き直って説明してくれる。


「ダンジョンコアが侵入者から自衛するための召喚でした。ただ、管理する者がいなかったために、それはランダムで召喚された形になります。つまり、私は偶然、このコアに呼び出されたに過ぎません。ただ、カイト様がマスターになったことで、任意の魔獣を呼び出せます」

「なるほど、確かに何となくできそうな気配はある」


 胸の奥で繋がっているコア。その奥にまたどこかに繋がっている気配がある。手繰り寄せるにはやはり、魔力が使いそうだ。


「魔獣の中には雑用に優秀な子たちもいます。その子たちを召喚することを勧めます」

「そうだね。とはいえ――」


 カイトはコアを横目で見て、少し迷ってから不安を口にする。


「けど、仲良くできるかな」

「……まぁ、それは出たとこ勝負ですよねぇ」


 フィアは曖昧に苦笑し、少しだけ視線を逸らした。


「これまでもコアは自衛のために魔獣を召喚したことがあります。ただ、居座っていた私に怯えて逃げてしまい、結局、私はひとりぼっちだったので……」


 そう告げた彼女はため息をつき、つんつんと人差し指を突き合わせ始める。その様子に今度はカイトが苦笑をこぼす番だった。


(なんというか――フィアはよく拗ねるというか。表情豊かというか)


 そんな姿もまた可愛らしく、見ていて飽きない。気づけばカイトは手を伸ばし、その頭に手を載せていた。


「大丈夫。僕は何があってもフィアの傍にいるから。フィアがいてくれる限り」

「あ……」


 その言葉にフィアは目を見開くと、嬉しそうにへにゃりと眉尻を下げ、こくんと頷いた。それから、頬を染めながら小さな声で告げる。


「私も――カイト様を、お支えしますから」

「ああ、ありがとう。じゃあ一旦、試してみよう」


 カイトは笑いかけながら言うと、フィアは弾けるような笑顔で頷いてくれた。


   ◇


 召喚はどこでもできるが、広い場所で目につかない方がいいらしい。

 フィアの助言を受け、カイトは彼女を連れて洞窟内の地下空洞に足を運んだ。カイトが召喚された日、フィアと冒険者が激戦を繰り広げた場でもある。

 地下空洞はある程度の広さがあり、物資が固めて置かれている。


(今後は、ここを迎撃拠点として改良しないといけないな……)


 そう思いながら空洞の真ん中に立ち、カイトは一つ頷く。


「ここでいいかな」

「はい、いいと思います。ここなら大抵の魔獣が現れても物を壊す心配がありませんし」


 フィアは言いながらカイトの隣に立つ。カイトはその場で座りながら彼女を見上げた。


「ちなみに、召喚のコツとかあるのか?」

「私はやったことがないので何とも……」

「まぁ、それもそうか」


 となると、カイトの感覚、直感頼みになる部分も多そうだ。よし、と気合を入れて座禅を組み、その場で集中する。

 コアを通じて繋がる別次元の世界――そこには確かに無数の命の気配がある。そこに呼びかけるようにすると、その命の気配が反応してくれる。


(ひとまず、お試しだな――)


 カイトは一呼吸置き、来てくれる仲間を思い描きながら呼びかける。


(今、僕たちに不足しているのは力持ちの仲間――)


 フィアも力はあるが、小さな少女の身体である以上、運搬力が乏しい。

 それを補えるような大きさがあり、いろいろ運べる大きさがあり――それでいて、心優しくて、フィアと相性が良い子。

 それを思い浮かべると、いくつかの命が近寄るように反応を見せた。


 中でも一際大きく反応を見せる存在が一つ感じられるが、そこまでは魔力が届きそうにない。カイトは少し考えて、近くにいる存在に呼びかける。

 それが確かに応じてくれ、微かな繋がりが生じる。そこでカイトはそれを引き寄せる。

 それだけでコアの中からぐんぐん魔力が減っていくが、お構いなく引き寄せた瞬間、ぱっと目の前で白い光が迸る。それは徐々に大きくなり、思わずカイトは目を細める。

 直後、ずん、という音と共に何かが目の前に降り立った。

 光が収まっていく。その中でカイトは視線を向け、思わず目を見開く。


(大きい――岩石の、巨人……)


 背丈は三メートル弱ありそうな巨人だ。身体中が岩石になっており、顔の部分の凹みには光る鉱石が埋まっている。巨人はカイトとフィアを見下ろすと、膝をついて頭を垂れる。


「ゴーレム、でしょうか……カイト様、いきなりすごい魔獣を呼び寄せましたね……」


 フィアがそれを見上げながら感嘆の声を上げる。ああ、とカイトは頷きながら手を伸ばし、その岩巨人――ゴーレムに触れる。岩は冷たくなく、温もりがある。

 まるで太陽に照らされた岩のように、ぽかぽかと温かい。

 カイトはその手の部分に触れ、声を掛ける。


「これから手を貸してもらいたい。よろしく」


 その言葉にこくんと頭を垂れるゴーレム。言葉は発せないらしい。カイトは少し迷ってから声を掛ける。


「名前をつけてもいいかな」


 再び、こくんと一つ頷くゴーレム。


「じゃあ――安直かもしれないけど、レム、でどうかな」


 こく、こくと二つ頷くゴーレム――もとい、レム。心なしか動きは早く嬉しそうだ。

 その様子に、む、と軽くフィアは唇を引き結び、レムの足をぺしぺしと叩く。


「カイト様から名をもらったからと言って、調子に乗らないように。カイト様の一番の従者は私です。私の言うこともきちんと聞きなさいよ、レム――あ、こらっ」


 不意にレムの手が動き、柔らかくフィアの身体を掴むと持ち上げる。フィアが暴れるが、気にも留めずに自分の肩にぽんと載せる。

 フィアは暴れるのを止めると岩を掴み、レムの肩の上で不服そうな表情を見せる。


「――舐められているのでしょうか。私は」

「そんなことないと思うけど。多分、肝が据わっているんだ。この子は」


 じゃないと火竜のフィアをこんな子供扱いしないのだろう。

 小さく苦笑をこぼし、カイトは拳をレムに突き出しながら告げる。


「改めてよろしく。レム」


 レムはこっくりとフィアを落とさないように頷き、拳を差し出してくれる。そして、柔らかくこつんと拳を合わせてくれた。

 よし、と頷き、カイトはフィアを見上げながら声を掛ける。


「まだ魔力は残っている。続けて何人か召喚しようと思うんだが」

「はい、それは構いませんが――ただ、レムのような子をこれ以上呼び出すと、魔力をかなり使い切ってしまうと思いますが」

「そうだね。だから、もう少し小さく、召喚に魔力が少なそうな子を呼ぼう」


 レムの召喚で大体、コツを掴んだ気がする。

 再びカイトが座禅を組み、集中する。意識を研ぎ澄ませれば、コアを通じて再び見えてくる別次元――今度はその中の小さな光に目を向ける。


(その中で心優しくて、手際が良くて、細かい作業ができそうな子――)


 それにフィアやレムが仲良くできそうな子を。

 その呼びかけに応じ、様々な存在が反応を返した。その中で一際大きな反応を見せたのは、遠くにいる少し個性的な光だ。


(あの子、確か、レムの召喚のときにも……?)


 少し気になる。だが、彼女を呼び寄せるには魔力が足りない。

 断念して他の子に意識を向けると、遠くの光はしゅんとしたように主張が小さくなった。それを気に掛けながら、応えてくれる光に呼びかける。

 それも同じような光がいくつかまとまって。その感触に目を細め、よし、と頷く。


(数人まとめて来てくれるなら、都合がいい――キミたちに決めた)


 魔力を使って引き寄せる。瞬間、再び白い閃光が迸った。

 ただし、今度はレムのときより小さく、複数だ。視線を向けると、すぐに光が収まっていく。そこに姿を見せたのは、背の低い小人たちだ。

 その数は八人。さらに目を引くのは、全員がお面をつけていることだ。

 その素材は恐らく石。特徴的な石仮面で少し不気味さがある。

 フィアはレムの肩から軽やかに降り立ち、膝をついてその子たちに視線を合わせた。


「この子たちはキキーモラですね。働き者の妖精さんたちです」

「そう、なのか……随分と、独特な仮面をつけているが……」

「この子たちは基本的に目立つのを嫌うんです。だから仮面をつけたり、木陰に隠れたりします。手先はすごく器用なんですよ――ふふ」


 フィアが手を差し出すと、キキーモラの一人がその手を両手で握り、軽く振ってみせる。愛嬌のある仕草に彼女は思わず笑みをこぼしている。

 カイトも座禅を解きながら手を差し出すと、キキーモラたちは我先にと手を取ろうとし、押し合いへし合いになっている。カイトはもう片方の手を出して、キキーモラたちを分散させながら表情を緩める。


「確かにいい子たちみたいだ」

「はい、レムも妖精の一種なので、仲良くできると思いますよ」

「それは良かった――で、キミたちは言葉は喋れないのかな」


 その言葉にかわるがわる握手をしていたキキーモラたちは揃って頷いた。だが、そのうちの一人が進み出ると、身振り手振りで意思を伝えてくる。


「ん……? でも、何でも言ってくれれば、できるだけ、力になる――?」


 何となくその意図を汲み取ると、こくこくとキキーモラはまた頷いてくれる。

 頼もしい妖精の姿に、思わずカイトは表情を緩めた。


「そうか。ありがたい限りだ」


 そう言うと、キキーモラたちもレムも力強く頷いてくれる。


(最初は不安だったが――いい子たちが来てくれたみたいだ。頼もしいな、本当に)


 魔力は結構減ってしまった。だけど、人手がいればきっと挽回できる。


「頑張りましょう。カイト様。ここからはペースアップして作業を進めましょう……!」


 フィアの言葉に頷き、カイトは立ち上がって告げる。


「みんな、よろしく頼む。一緒に頑張ろう」


 その声にキキーモラたちは拳を突き上げ、レムは胸を力強く叩いてくれた。

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