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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第五章

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第28話 一進一退の攻防

『カークス、そちらは殲滅完了だ。持ち場に戻ってくれ』

『了解です。カイト様』


 柵を飛び越えた侵入者の殲滅を確認したカイトは、洞窟内の最奥で意識を集中させていた。その頭の中では侵入者の気配がうるさいほど感じられる。

 だが同時に、侵入者の居場所は大小漏れず、全て捉えることができている。

 例え、物陰に隠れても無駄だ。ダンジョンマスターの権能で確認し続けるカイトは素早く次の指示を出していく。


『ベルディ、別のポイントが突破されそうだ。キミが近い。対応してくれ』

『フィア、決壊地点に人が集中している――薙ぎ払ってくれるか』

『キキ、その地点は危険だ。レムが回収するから下がるように』


 全体の指揮はソフィーティアが取っている。一方でカイトは全体を見て、隙ができた部分に遊撃隊を送り込み、危険な地帯から人員を退かせていた。

 おかげで現時点では、第三区画に侵入こそされど、突破はされていない。


(しかし、やはり侵入者が多い――波状攻撃もきついな)


 侵攻してきたのは朝。準備期間も充分あったため、罠も仕掛けており、配備も余裕で間に合った。だが人数に任せた平押しは想像以上に圧力があった。

 その上、内部に巧妙に侵入しようとする者もいる。

 マスターの権能がなければ、彼らに撹乱を許し、さらに負担は増加していたはずだ。


(そう考えれば、効率よく防げているのだろう――)


 それにダンジョンに導入された、新たな兵器が防衛に一役買ってくれている。

 視界を切り替えれば、樹木を流用した櫓にキキーモラ三人組が張り付き、狙いを定めている。手にしているのは金属の筒。

 一人が構え、もう一人がその身体を支え、最後の一人は筒を抑える。

 体勢が整った瞬間、キキーモラが引き金を引き――直後、轟音が響き渡った。彼らの視界の先で一人の魔術師が頭から仰け反って崩れ落ちる。

 見事な狙撃。それを成し遂げたキキーモラに内心でエールを送る。


(まさか、シエラが銃を再現してくれるとはな――)


 数日前、シエラが完成させ、見せてくれたのがあの銃だった。

 現物はすでにあった。というのも以前、ジェシカたちが襲ってきたときに弓手の一人がライフルを持っていたのである。保管していたそれをシエラに見せたところ、わずか三日で再現に成功。一週間で量産までしていた。


『突貫だから悪いけど、五十が限界だった。品質は問題ないはず』


 シエラはそう言いながら、作り上げた銃を試射してみせる。

 けたたましい銃音と共に、的として置かれた古い鉄が凹んでいた。火薬はゴーレムが集めてきた硫黄、古土から硝石を集め、それで作っている。

 はっきりと銃や火薬が機能していることを示しながら、シエラは続けた。


『ただ、貸してくれたライフルは再現が難しく、多少は妥協した。カイトが話してくれた前装式を採用し、着火は火縄を使う――それで構造を簡素化している』


 それはまさに、戦国時代で普及した火縄銃にそっくりだった。

 使っている弾丸も鉛玉、ライフリングもないので命中精度はそこそこ、貫通力もあまりない。ただ、その火力はあまりにも魅力的だった。

 そして、カイトはそれをエルフに――ではなく、キキーモラたちに配備した。


(銃の真価は扱いやすさ。わずかな訓練で女子供も使え、人を殺せるようになる)


 つまり、今までは後方支援ばかりだったキキーモラも、この火縄銃があれば充分な戦力になる。現に彼らはそれ一つを三人で扱いこなし、戦果を大いに挙げていた。

 また一人、キキーモラは敵を撃ち抜く。その瞬間、銃を抑えていたキキーモラが素早く銃口に棒を突っ込み、清掃。その間にもう一人が火薬を用意する。

 手際よく火薬と弾を流し込んで突き固める。わずか数秒で次弾装填を終えた彼らはすぐさま再び狙撃の準備に入った。その手際の良さには感心させられる。


(三人がかりなら、反動も制御できるし、何より火縄銃の煩雑な次弾装填を効率化できる。三段撃ちならぬ、三人撃ち――悪くない采配だな)


 彼らには装備の薄い連中を狙い撃ちにするように頼んでいる。エルフたちと射線が被らないように高い位置から、遠くを狙う方針だ。

 幸い、キキーモラたちは手先が器用で、狙いをつけるのも上手だ。敵が集まっているところを見ると、そこに効率よく銃弾を叩き込んでいる。


 おかげで後続の勢いは削がれている。これなら凌ぎ切れるか――。


 そう淡い期待を抱いた瞬間、不意に轟音が響き渡る。視界を切り替えれば、土煙が巻き起こり、柵の一角が完全に崩落していた。そこに盾を構えた侵入者たちが押し寄せ、銃弾や矢を退けながら突っ込んでくる。

 数は三十以上――とても前線のエルフたちでは防ぎきれない。カイトは素早く思考を巡らせ、近くで待機しているゴーレムたちに指示を出す。


『侵入者の足止めを頼む。みんな。ソフィーティア――』

『分かっている。すでに第三区画を放棄するように命じた』

『退避が完全に終了したら伝えてくれ。ゴーレムたちだけでも支え切れるか――』


 そう伝えかけた瞬間、視界の中で爆音が響き渡った。ゴーレムの肩が爆ぜ、ぐらりとその身体が揺れる。その隙に、懐から飛び込むように人影が走った。

 直後、ゴーレムの身体に真一文字が刻まれ――地面に倒れ込んだ。

 他のゴーレムたちも侵入者の猛攻を身体で受け、削られている。また一体、また一体と沈む光景に思わずカイトが言葉を失っていると、ソフィーティアの声が響き渡る。


『カイト様、退避完了だ!』

『――っ、第三区画から離れろ!』


 ゴーレムたちに素早く指示を出す。だが、岩巨人である彼らは動きが鈍い。そこに容赦なく冒険者が追撃を加えようと地を蹴り――。

 瞬間、轟、と音を立てて火炎が間に割り込んだ。

 それを前にして、侵入者たちは一歩退いて体勢を立て直す。カイトは視界を切り替え、ゴーレムの救世主を見て吐息をこぼした。


(――間に合ってくれたか)


 第三区画の建物の上――そこを陣取り、短く炎の息をこぼす一人の少女。

 フィアが、来てくれた。

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