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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第五章

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第24話 装備を開発せよ

「装備の開発、ですか」


 屋敷の執務室。カイトがそこで切り出すと、フィアは湿った髪を拭いながら目をぱちくりした。その傍ではローラが彼女の髪を乾かしており、納得するように頷いている。

 ああ、と彼は頷き返しながら、言葉を続けた。


「輸送部隊襲撃のときもそうだが、エルフは人間を前にすると恨みで、我が身顧みずに戦うことがある。それからできるだけ彼らを守るようにしたいんだ」

「なるほど、さすがはカイト様」

「エルフの防御力を上げれば、少しは犠牲が減るかもしれないね」

「そういうこと――それで装備の質を上げるとするならば、鉄を使うことだけど」


 現在、エルフの戦士たちは革や木を使った装備を使っている。今まではそれで十分だったが、防御力を上げるとすれば金属を使いたいところだ。


「で、二人に相談だけど――鉄を扱える者に心当たりはある?」

「んー、鉄を加工できる魔物、ってことだよね」

「うん。場合によっては召喚も加味するけど」


 その言葉にローラは首を傾げるが、フィアはすぐに思い当たったように告げる。


「そういえば、普通にいますよ。ドウェルグです」

「ドウェルグ――と、いうと」


 少しだけ考え込み、ああ、とすぐに思い出した。

 少し前にエルフと揉めていた子――シエラが確かドウェルグだったはずだ。トラブルの後は洞窟に住まいを移しており、時折、屋敷の留守番などを頼んでいる。


「ちなみに、そもそもドウェルグって何者だ?」

「ドワーフの亜種ですね。人間の肌の色が違うように、ドワーフの中でも細かく種族が分かれます。そのうちの一つであり、鍛冶を得意とする種族です――まぁ、彼ら曰く、ドワーフとは全く別物らしいですが」

「……なるほど、了解した。鍛冶が得意なら、頼む価値はあるかな」


 善は急げ、だろう。カイトは頷くと立ち上がり、フィアとローラに声を掛けた。


「シエラに会いに行こう」


   ◇


 洞窟は改良が進められ、構造などが一部改められていた。

 屋敷の地下から直接アクセスできるようにしつつも、万が一、侵入されたとしても容易くは制圧できないように工夫が凝らされている。

 また、洞窟の一部区画は、暗がりを好む住民たちを引き受けている。

 その住居区画を訪れると、すぐにシエラが顔を見せてくれた。


「ん――カイトか。何の用?」


 素っ気ない口調で挨拶も抜きに告げる、小柄な少女。肌は浅黒く、額から突き出た二本の角が印象的だ。その彼女にフィアはため息交じりに告げる。


「……この子は全く。カイト様を呼び捨てにするなとあれほど……」

「カイトは好きに呼べ、って言ってくれたから」


 シエラはそう言いながら眠たげに目を細め、首を傾げる。


「また留守番?」

「いや、今日は相談だ。実は鉄の装備を作りたいのだけど――」


 カイトはそう切り出すと、エルフたちの身を守る装備を必要としている旨を続けて伝える。彼女はそれを興味なさそうに聞いていたが、ため息交じりに頷いた。


「分かった。エルフに手を貸すのは癪だけど、カイトの頼みなら仕方がない」

「やってくれるか」

「元々、冶金は私たちが得意としている。鉄装備を一式揃えることくらい造作ない」

「人手は大丈夫か?」

「避難してきたドウェルグと組んでやる。ただ、別の問題がある」


 彼女は角の先を軽く弄りながら、少し面倒くさそうに告げる。


「鉄資源が、あまりないこと」


 その言葉に思わず目を瞬かせると、シエラは軽く肩を竦めた。


「いくら冶金に優れていても、無から鉄は生み出せない」

「そう、か――そうだな。確かに」


 頷きながら思考を巡らせていると、フィアが軽く手を挙げて訊ねる。


「シエラ、ゴーレムに集めさせるというのは? 彼らなら地中の資源を回収できますが」

「ここらへんで採れる鉄鉱石はごくわずか」

「そうですか……となると、他の手段となれば戦利品か何か……」

「まぁ、一部の武器や防具は鹵獲しているが、それはほとんどエルフが使っているぞ」

(――そうなると、領邦軍の武装をコアに取り込んでしまったのも惜しまれるな)


 あのときはかなりの武装を戦利品として獲得できたが、そのときはまさかこんな大所帯になるとは思っていなかったために、最小限を残してコアに吸収してしまったのだ。

 カイトとフィアが思わず唸り声を上げると、ふとローラがぽんと手を叩いた。


「あ、兄さま、あれは?」

「あれ、というのは?」

「今、ダンジョンにはないけどさ。エルフを運ぶのに使われたあの檻」

「――あ」


 ローラの言葉にカイトは目を見開き、それだ、と小さく呟いた。


「あの檻は頑丈な鋼鉄製だった。今はあの森に放置されているが――」

「運ぶ手段さえ考えれば、流用できるはず、だよね」

「……目途は立ちそう?」

「ああ、実は――」


 いつの間にかシエラの目つきが変わっている。話の流れから鋼鉄が手に入ると分かったのだろう。カイトは頷きながらシエラに檻車について説明する。

 それに耳を傾けた彼女は少し考え込んでいたが、一つ頷いた。


「運ぶ手段には考えがある。分解すればいい」

「分解――どういう風に?」

「丁度、火竜がいてくれる。だから鉄格子を焼いて、格子を一本一本取り外してしまう。それをゴーレムに運ばせる。時間はかかるけど、確実に運べるはず」


 シエラの方策は分かりやすく具体的だった。なるほど、とカイトは頷き、フィアに視線を向けながら告げる。


「……確かに、その手段なら有効活用できるな」

「はい、危険も少なくて済みます」

「なら、すぐに取ってきて。あとカイト、たたら場を用意して欲しい」


 シエラは遠慮を感じさせない言葉で告げ、自身は踵を返して何かの用意を始める。その様子にカイトは苦笑をこぼしながら頷いた。


「分かった。外でいいか? 簡単なものにはなるが」

「ひとまず、あればいい。あとで注文はつける」

「了解」


 遠慮のなさが心地いい。カイトは頷くと、フィアとローラに視線を向けた。彼女たちも承知しているとばかりに力強く頷いた。


「私たちは交代で、鋼鉄の回収に行きます」

「姉さま、最初は私が行くね。レムたちを連れて行くから」

「お願いします。ローラ」


 カイトが指示するまでもなく、二人は段取りを決めてくれる。それを頼もしく思いながら、カイトは全員を見渡して告げた。


「攻め込まれる前に鉄装備を完成させよう――みんな、頼んだよ」


 カイトの声にフィア、ローラ、シエラは頼もしい声で応じてくれた。

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