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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第五章

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第3話 フェイの召喚

「――さて、始めようか。フィア、ローラ」


 エルフの受け入れが落ち着いた頃合いのある日。

 カイトはフィアとローラと共に、ダンジョンコアのある石室にいた。目的は魔物――フェイを召喚するためだ。彼女たちは神妙な顔つきで頷き、視線を交わし合う。


「分かっていますか。ローラ。もし、女狐どもがカイト様に手を出そうとしたら」

「うん、分かっている。上下関係を叩き込まないと」

「――その辺は程々に頼むな?」


 妙なやる気を見せる二人に苦笑を返しながら、カイトはコアに溜め込んだ魔力量を確認する――そこには充分な魔力量が蓄えられていた。


(貴族の軍隊を撃破してから、溜めに溜め込んできたからな――)


 やろうと思えば、大規模にダンジョンを作り変えることさえできるだろう。

 無論、それをやってしまえば、魔力がなくなるのでやらないが――。

 カイトは目を閉じてコアに意識を集中――召喚するべく、コアの向こう側に通じる世界に呼びかける。


(僕に協力してくれるフェイよ――召喚に応じてくれ)


 思い描くのは、人間社会で情報を収集する役目。時に危険があることも余すことなく伝える。瞬間、応えるように接触してくる感覚がある。

 三つの魂。それを引き抜くように、惜しみなく魔力を投入し、召喚する。

 瞬間、目を閉じても分かる眩い光が迸った。目を細めながら前を見ると、そこには三人の女性が降り立っていた。


(――確かに、美しい)


 三人とも人形のように整った顔立ちをしており、肌は荒れ一つなく滑らか。髪の毛も毛先まで艶やかだ。そして三者三様の美しさがある。

 そのうちの一人、長い黒髪の女性が前に進み出て一礼した。見るからに清楚な雰囲気を漂わせていて、浮かべた笑顔も花咲くように可憐だ。


「お呼びに応じて召喚されました。フェイのアリスティアと申します」

「同じく、リリスよ」「……シズクです」


 後ろに控える二人も名乗りを返す。リリスはひらひらと手を振って、シズクは無表情で。

 それに頷きながらカイトはそれぞれに視線を向けながら告げる。


「ここのマスターのカイトだ。こっちは従者のフィアとローラ。召喚の際に意図は伝えたと思うが、諜報員として働いてもらう魔物を探して召喚した。ぜひ僕たちのダンジョン戦略に協力して欲しい」


 カイトの言葉にアリスティアは小さく目を見開き、リリスとシズクも顔を見合わせる。その様子にフィアは眉を寄せながら怪訝そうに告げる。


「――どうかしましたか。貴方たちなら造作なく人間社会に紛れ込めると思うのですが」

「は、はい、それについては問題ありません。私たちは古来より人と共存してきた、数少ない魔物ですから。完全に隠し通し、人間社会に紛れられる自信はあります。けど」


 アリスティアはそこで口ごもる。その後を引き継ぐようにリリスが挙手する。

 ウェーブがかかった茶髪に、ぱっちりとした目鼻立ちが印象的で、どことなしにギャルっぽさを感じさせる。彼女は気だるげな口調で続ける。


「あたしたちからすると、少し意外だったのよ。そういう意図はあったとしても、あたしたちのことを別の用途に使うんじゃないかって」

「……別の用途、とは?」

「えっちなことに決まってんじゃん」

「……っ、貴方ねぇ……っ」


 あっけらかんと言ってのけたリリスに、フィアは呆れたような声を上げ、ローラは何を想像したのか顔を赤らめてしまう。

 その反応にリリスはけらけら笑い、ごめん、と軽く手を振った。


「でも、私たちフェイを召喚する男たちっていうのは、大体そういう目的なんだよ。だから、ちょっと面白そうだから召喚に応じたワケ」

「私としても、どんな目的であれ、カイトさんが必要として下さるならば、全力で応じるまでと考えています。どうか協力させてください」


 アリスティアはそう告げながら自然とカイトの距離を詰め、小さな手でカイトの掌を包み込むように握る。柔らかい感触に思わずどきりとしてしまう。

 間近な距離で、アリスティアの黒い瞳が見つめてくる。その煌めきは綺麗だが、カイトは落ち着いて微笑み返し、そっと手を抜いた。


「……ぁ……」


 少しだけ名残惜しそうにアリスティアは瞳を揺らす。その仕草は逐一、男心をくすぐってくる。さすが傾国の魔物なだけはある。

 一方でリリスは目を丸くし、おー、と小さく声をこぼした。


「カイト様の言葉、嘘じゃなさそうだね。これで揺らがないのは」

「当然です。カイト様は知勇に優れた方。あまり試されるのは賢明ではないですよ」


 フィアがリリスに牽制するように告げると、リリスは降参するように両手を挙げた。


「分かった、分かったから――ま、密偵っていうのも面白そうだしね」

「前向きなのは助かるよ。アリスティア、リリス――それで、シズクの方は?」


 視線をあまり無口な少女に向ける。彼女はアリスティアやリリスと違い、小麦色の肌をした、少し童顔な少女だ。目鼻立ちは綺麗だが、あまり愛想を感じさせない。

 カイトの言葉に彼女は視線を合わせると、頭を静かに下げた。


「主のご下命に従うのみです」

「そ、そうか」


 どこか覚悟が決まった口調に瞬きをする。アリスティアやリリスと比べると、別の魅力を感じさせる女性だ。フィアに似通った覚悟の据わり方を感じさせる。

 うんうん、とフィアは満足げに頷き、微笑んでみせる。


「良い覚悟です。シズク」

「ありがたきお言葉。よろしければカイト様、諜報活動の方針について詳しく聞かせていただいてもよろしいですか」

「ああ、もちろん。といっても、近くの街に行って情報を集めて欲しいということなのだけど」


 そう前置きしてから、カイトはこれまでの経緯も軽く触れる。

 人間陣営の情報があまりにも不足しており、今までも対応が後手に回っていることも触れると、シズクは何度も頷いて理解を示してくれる。

 一方で話に耳を傾けていたアリスティアは難しそうな表情を見せる。


「なるほど、話は理解しましたが――我々が人間社会に紛れ込むには、この社会がどのような状況なのか、知る必要がありますね」

「だねー。あたしたちはまだ実際にこの世界の人間と話したこともないわけだし」

「大丈夫だ。それについては対策も考えている」

「……では、カイト様が人間社会について教えてくださると?」


 訊ねるシズクにカイトは首を振り、苦笑交じりに告げる。


「実はこのダンジョンには人間社会を知っている者がいる」

「え、そんな人いたっけ……?」


 はて、とローラは首を傾げ、フィアも黙って考え込んでいたが、ふと思い立ったようにぱっと視線を上げた。


「います。なるほど、生かして正解でしたね」

「ああ、こういう利用手段があるとは思わなかったが」


 カイトはフィアに頷いて見せると、フェイ三人娘を振り返って告げる。


「ついてきてくれ。このダンジョンの唯一の捕虜を紹介する」

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