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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第一章

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第4話 ダンジョンの敷地調査

「それでフィア――まずは何からしようか」


 意気込みを新たにしたカイトとフィアは石室内で腰を下ろし、向き合っていた。カイトの疑問に、はいっ、とフィアは元気よく頷いて瞳を輝かせる。


「カイト様、これから私たちが行うのは、ダンジョンの運営になります」

「ダンジョン運営」


 カイトがおうむ返しに訊ねると、フィアはこくんと頷いて傍のコアに視線を移す。


「ダンジョンを豊かにするためには、コアが供給してくれる魔力が必要不可欠です。今の状態でも魔力を生み出してくれていますが、その量は限りがあります。ダンジョンコアの生成する魔力を増やすためには大きく分けて二つの手段があります」


 フィアはカイトに視線を戻すと、一本指を立てて言葉を続ける。


「一つは魔獣を増やすこと。コアは魔獣の老廃物などを吸収し、魔力を生み出すことができます。ただ、魔獣を増やし過ぎると、今度は糧になる魔力が足りなくなるので、徐々に増やすことが大事になります」

「なるほど、それでもう一つは?」


 カイトは頷きながら訊ねると、フィアは二本目の指を立てた。


「二つ目はコアに供物を与えることです。獣の血肉であったり、果物であったり――それらは老廃物よりも魔力を効率よく生み出すことができます」

「ふむふむ、大体理解できた気がする」


 分かりやすく考えると、ダンジョンコアというのは発電機のようなものなのだろう。燃料を投入すればするほど、出力が強化されていく。

 そして、コアが生成した魔力によってさまざまな恩恵を預かることができる、といったところか。具体的な例としては、先ほどやったようにフィアを強化することなど。


「何にしても、ダンジョンには魔力が必要不可欠、ということだな」


 端的にカイトはまとめると、フィアはうんうんと深く頷いて微笑んだ。


「その認識で間違いありません。カイト様」

「ちなみに、ダンジョンってどこのことを示すのかな。この石室と洞窟?」


 ふと気になってカイトが訊ねると、フィアは打てば響くように答えてくれる。


「正しくはコアの影響を及ぼすことができる範囲内をダンジョンと呼びます。カイト様はコアと契約したことにより、マスターになったため、何となくその範囲が分かると思います。コアが成長すれば、その範囲も広がっていくでしょう」


 ただ、とフィアはそこで一息置き、言葉を付け足す。


「勢力が大きくなればなるほど、人間たちに感づかれやすくなります。つまり、侵入者も増えていく。無論、撃退してその血肉をコアに捧げればそれだけ強化できますが」

「なるほど、つまり僕の役目は――運営と防衛」


 その言葉をカイトが口にすると、彼女は神妙な顔つきでこくんと頷いた。


「予め申し上げます――ダンジョンコアと契約したカイト様は、もはやコアとは一心同体です。もしコアが破壊されるようなことがあれば、貴方は死にます」


 その言葉にカイトは驚かない。コアと繋がった瞬間にそんな感覚はしていた。

 このコアはもう自分の体の一部のような、そんな感覚だ。自分の胸に手を当てながら、傍で光る鉱石を一瞥する。その光の脈動は自分の心臓の鼓動と完全に一致していた。


(もはや否が応でも、このコアを守らないとならないんだな)


 カイトは深呼吸してから視線をフィアに戻す。


「大体分かったよ。フィア。いずれにせよ、守るには縄張りを確かめないといけない」


 そして、カイトはその場で立ち上がると、フィアに告げた。


「ダンジョンの敷地を調査しよう」


   ◇


「ダンジョンコアは現在、地中にあります。外に通じるのは洞窟が一本だけですね」

「一本道、ということか?」

「ええ、そうなります」


 フィアの説明を聞きながら、カイトは連れ立って石室から出た。

 フィアがどこからか松明を取り出してくれたので、その明かりを頼りに進んでいく。洞窟は確かに一本道だ。フィアは先を照らしながら言葉を続ける。


「途中で拓けた空間もありますが、それだけです。そこで私はよく戦いますね」


 ここです、とフィアが先を示す。そこには確かに拓けた場所が広がっていた。天井も高く、まるでドームのようになっている。地面に刻まれた業火の痕跡や転がっている死体を見やり、フィアは告げる。


「ここが先ほど、私が戦った場所です」

「そうみたいだな……死んでいる、か」

「はい、トドメはきっちり刺しています」


 焼け焦げた二人はともかく、フィアの爪を受けた男たちの死体は生々しい。


(……結果的に命を奪う片棒を担ったんだな。僕は)


 そう思うと、少しだけ息が詰まりそうになる。だが首を振ってそれを振り払うと、手を合わせて黙とうを捧げる。その様子にフィアは軽く首を傾げる。


「カイト様、一体何を?」

「……供養だよ。侵入者であり、フィアに殺されても仕方なかったとは思う。だけど、等しく命であることは変わりないから、せめて散った命が安らかに眠れるように祈っている」

「それは敵であっても、ですか?」

「敵味方関係なく。だって死んだらもう恨み辛みは関係ないだろう?」


 カイトが手を合わせ終えてフィアに告げると、なるほど、と彼女は神妙な顔つきで頷いて手を合わせる。しばらくの沈黙の後、フィアは手を降ろしながら遠慮がちに訊ねる。


「その、死体の方はどうしましょうか……?」

「まぁ、本来ならば火葬や埋葬で弔うのが筋なんだけど」


 カイトは受け答えしながら、横目でフィアに視線を合わせる。


「さっきの話を聞くに、これもコアの供物になるみたいだな?」

「はい……そうなります」


 心なしか申し訳なさそうに言うフィアに、カイトは努めて軽く言う。


「なら、そうしよう。弔った分、筋は通した。なら死体は有効活用させてもらう」

「……よろしいのですか?」

「ああ。気を遣ってくれてありがとう。フィア」


 カイトは軽く微笑みかけると、フィアは少しだけ照れくさそうに首を振る。


「仕える身として当然です。やり方は、分かりますか?」

「ああ、何となくね」


 カイトは答えながら視線を転がっている死体に向け、吸収するように意識する。それだけで死体が縮み始め、地面が盛り上がっていく。やがて死体は土に包み込まれた。その中から白い煙、蒸気が立ち上っている。

 これが供物として吸収しているのだろう。他の死体や黒焦げになった死体も同じようにしていくと、フィアは感心したような眼差しを向けてくる。


「もうすでにコアのことを理解できているんですね」

「まだ一部だけどね」


 そう言いながらカイトは軽く地面に手をかざす。魔力を放って意識すると、ぼこ、と土が盛り上がった。それは徐々に不格好ながら椅子のような形になっていく。


「……イメージ通りに作るのは、難しいか」


 思わず呟きながら視線をフィアに戻すと、彼女は驚いたように目を見開き、やがてその表情に喜色を滲ませ、興奮した口調で告げる。


「すごいです……! もうすでにダンジョンコアを使いこなしています……!」

「いや、多分まだまだだと思うよ。使える魔力も少なそうだし」


 カイトは自分の胸に手を当てる。その奥でコアと繋がっている感覚がある。

 そこには魔力が蓄えられているのを感じるが、量はあまり多くない。小さなものならば作れそうだが、大きなものを作ったらあっという間に魔力が枯渇するだろう。


「焦っても仕方がないけど、着実に魔力量は増やさないとな」


 カイトはそう口にすると、フィアは真剣な表情で頷いてみせる。


「魔力があればダンジョンを改築するだけでなく、魔獣も召喚できるようになります。運営はもちろんですが、防衛には魔力が欠かせないでしょう」

「なるほど――ふむ」


 フィアルマが侵入者たちを戦っていたことを思い出す。

 今は彼女がこのダンジョンのガーディアンを担っているが、侵入者が多ければ彼女だけでは捌けなくなるだろう。


(ただ、それを補う魔獣を召喚する魔力は現状、足らない――)


 となれば必要になってくるのは――魔力に頼らない迎撃手段。


「――カイト様?」


 フィアの声に思考に耽っていたカイトは我に返った。気遣うような彼女の眼差しに、何でもない、とカイトは手を振りながら視線を先に向けた。


「先に行こう――次は洞窟の外も見るべきだろう」

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