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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第四章

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第9話 エルフたちと話しながら

「フィア殿のことが心配かな。カイト様」


 エルフが建てたテント。そこで雑談をしていたカイトに、ソフィーティアは悪戯っぽい表情で訊ねてくる。カイトは一息つくと、少し苦笑した。


「分かるか? ソフィーティア」

「うむ、少し上の空に感じられる。そうだよな、ミレーヌ」

「ええ、それだけ想われていることに羨ましく感じますの」


 お茶を口にするミレーヌも穏やかに言い、軽く首を傾げる。

「もしかして、特別な関係だったり?」

「フィアは大切な相棒だよ。最初期からいる仲間だね。先も話した通りだけど」


 ここのテントにお邪魔してから、カイトは彼女たちとこれまでのことを話していた。

 フィアと二人で罠を作り、せっせと魔力集めに励んだ日々。フィアとローラは健啖家で食事の作り甲斐があることなど――。

 ソフィーティアとミレーヌが聞きたがったので、つらつらと話していたのだ。

 それを思い出したのか、ソフィーティアは微笑んで頷いた。


「ふむ、なるほど。だからこその信頼関係、というわけか。何かと呼吸が合っているようだし。何気ない目配せも交わしているようだし」

「ま、その辺は想像にお任せするよ」


 肩を竦めながら茶を再び口に運ぶ――その口に広がるのはまさしく茶の風味だ。

 ソフィーティアが集落から持ち込んできたものであり、エルフが愛用するお茶らしい。だが、チャノキではなく、どうやら植物の豆から作っているらしい。

 ほぅ、と一息ついて飲み干すと、ミレーヌは微笑みながら首を傾げる。


「おかわりは?」

「いただいても?」

「もちろんですの」


 ふんわりと笑い、ミレーヌは茶の支度を始める。木の筒に入っていた豆を一粒取り出し、木の器にそれを入れる。そしてそれを軽く砕いてから湯を注ぎ入れた。

 それで完成らしい。ミレーヌはそっとカイトにその器を差し出した。


「熱いので気をつけて」

「ああ、ありがとう。ミレーヌ」

「どういたしまして」


 器を受け取って香りを確かめる――やはり、茶の香りだ。

 不思議なものだな、と思いながら、カイトは唇をエルフ茶で湿らせていると、ソフィーティアはカイトを見つめながら口を開いた。


「カイト様とフィア殿の関係性は詮索しないが、最近、きちんと話しているか?」

「ん、ちゃんと時間は取っているつもりだが」


 何せ居住区はカイト、フィア、ローラの三人で共用なのだ。食事や就寝前の時間はきちんと共にし、何気ない会話を挟んでいる。


(あ、でも――)


 最近は夜も忙しくしている。エルフが来てからは名簿を作ったり、今後の計画を練ったりしており、それの相談をすることが多い。

 何気ない会話、という意味では、ここしばらくしていない――。

 それでもしかしたら、フィアの心も不安定になっているのかもしれない。


(結構、フィアは自己肯定感が低いから、ソフィーティアと自分を比較しているのかも)


 カイトは思わず眉を寄せていると、ソフィーティアは小さく吐息をこぼして苦笑する。


「マスターであるなら、きちんと自身の配下のケアをしないといけないぞ。たまには二人きりの時間を設け、肚を割って話すべきじゃないかな」

「……諫言痛み入る。とはいえ、時間は用意しているつもりだけど」

「本当ですの? きちんと己の気持ちを伝えておりますの? カイト様」

「…………」


 思わずカイトが無言になれば、ふむ、とソフィーティアは腕を組んで目を細める。


「差し詰め、気心が知れ合っているからこそ、あまり気持ちを口にせんようだな」

「……ご明察だな。考えてみれば、口にしていない、か」


 最近のフィアは察しが良く、全てを語らずとも行動してくれるところがあった。それに甘えている部分も少なくない。

 ミレーヌは苦笑しながら諭すような口調で告げる。


「言うべきですの。フィアさんをどれくらい大事に思っているか、とか。意外とこういう気持ちは口にしないと、伝わりませんの」

(……それも、そうだが)


 ただ、改まって伝えるのも、気恥ずかしいのも事実だ。

 フィアに対する気持ちはもう感謝だけでない。好ましく思う気持ちもあって――それを正面切って伝えるのは、なかなか勇気がいる。

 だから、カイトはごまかすように肩を竦めた。


「時間があれば伝えたいが――ただ、キミたちが来て忙しい日々でね」

「それを言われると耳が痛いな」

「ですの」


 ソフィーティアとミレーヌは顔を見合わせて困ったように視線を交わし合う。だが、すぐに二人はカイトに視線を戻し、微笑みかけてくれる。


「だが、エルフ衆が揃ってからは、必ず力になれるはずだ。女子供とはいえ、森の力を最大限に引き出せる種族だからな」

「話を聞いたところだと、食事とかに苦労していたみたいですけど、そういう生産面はお役に立てると思いますの。すでに目途も立っていますし」

「それはありがたい――想像以上に助かるよ」


 カイトは軽く頭を下げて謝意を示し、ふと思い出してソフィーティアに視線を向ける。


「と、そういえばそろそろ、またエルフたちを迎え入れるんだよな?」

「ん――ああ、その予定だな。一応前に話した通り、明日にはミレーヌを発たせる予定だ。そこでこのダンジョンに加わることを同意した面々を連れ、戻ってくる」

「目途だと三十人になりますの。ただ、他の集落から希望者が来ている場合も考えられるので、それ以上は考えていただきたいかな、と」

「そうか――なら、ついでに挨拶しに行くべきかな」


 何気なく告げた言葉にソフィーティアは目を見開き、いやいや、と笑って手を振る。


「その気持ちはありがたいが、そこまでしてもらう必要はない。むしろ、その道中でカイト様に何かあったら、フィア殿やローラ殿に殺されてしまう」

「とはいえ、僕じゃないとしても誰かしらはダンジョンの代表として、親善の挨拶に行くべきだろうな――」


 それに、と内心でカイトは思考を深める。


(この森の東部――その情報を収集する必要もある)


 ソフィーティアはでき得る限りの情報を提供してくれたが、別の角度からの情報が必要になってくる。エルフの集落までの距離、エルフの文化など、彼女たちの主観では気づきにくい情報が。

 そのためにも、カイトでないにしても、彼の意を受けた者が行くべきだ。

 信頼における、腹心のような者が。


 そんな相手は、一人しか思い浮かばなかった。

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