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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第三章

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第8話 撃退のご褒美

 戦いはすぐに終わった。

 陣地を最大限に生かしたフィアたちの攻撃に侵入者たちが耐えられるはずもない。五分も絶たずに壊滅し、地下空洞は静寂が訪れていた。


「――フィア、お疲れ様」


 カイトは地下空洞に足を踏み入れると、ドラゴンの姿のフィアはゆっくりと振り返り、ぐるぐると甘えるように喉を鳴らした。その姿を見上げ、思わず感慨深く思う。


(――最初の頃は、もう少し小さかったよな)

 だが、充分な魔力を得た結果、この地下空洞が窮屈に思えるほどに身体が大きくなっていた。首をもたげ、頭を下げてきたので、カイトは手を伸ばしてその顔に触れる。

 そのまま、目元を撫でると、彼女は愛おしそうに目を細めた。

 それから身を引くと、ドラゴンの身体が静かに炎に包まれる。大きく燃え上がった炎はすぐに小さくなっていき、人の大きさのサイズまで縮むと、炎が掻き消える。

 あっという間に人の姿に戻ったフィアは嬉しそうに表情を綻ばせて一礼した。


「カイト様――敵を討ちました。完全勝利だ」

「ああ、見ていたよ。火竜に相応しく、圧倒的な勝利だった」


 途中、二人の騎士が土塁を強引に跳躍で飛び越えてきたときは焦ったものだが。

 それを見切り、フィアは冷静に対応。中空にいる隙だらけの敵を火竜化し、その牙と爪で的確に仕留めていた。他の敵もゴーレムとキキーモラが矢や投石で無力化している。

 カイトは小さく安堵の息をこぼしながら、フィアの頬に改めて手で触れた。


「怪我は、ないか?」

「はい、今回は完全に完璧な勝利です。慢心もせず、的確に敵を処理しました」


 そう告げて見上げてくるフィアは頬を染め、ちら、ちらと見上げてくる。物欲しげな視線にカイトは目を細め、手を伸ばそうとし――でも、少しだけ迷う。


(頭を撫でるだけだと、いつも通りだな)


 今日は最高の働きを見せてくれた。誰も犠牲を出していない。ならば、もっと褒めてあげるべきだろう。とはいえ、どうすればいいか分からない。

 悩んだ末にカイトはフィアに訊ねる。


「――ご褒美は何が欲しい?」

「ご褒美……あの、その……」


 フィアは視線を泳がせ、胸の前で拳を握りしめてから小さく告げる。


「……ぎゅっ……ってしてもらっていいですか?」


 そう言って小さく身を縮める彼女にカイトは頷いて手を伸ばした。丁寧にその身体に腕を回し、抱き寄せる。小さな身体は一瞬だけ震えたものの、フィアはカイトの胸に身体を預けてくれる。


「温かい、です……」

「フィアの方こそ」


 火竜であるからだろうか、身体の熱が強く伝わってくる。だけど熱くなく心地いい。彼女が傍にいてくれることが嬉しくて安心する。

 思わず腕に力を込めると、彼女は喉から甘えるような声を鳴らし、上目遣いでカイトの顔を見上げる。目が合うと、彼女は真紅の瞳を潤ませてそっと目を閉じる。

 長い睫毛が揺れ、そっと差し出される唇――。

 それに吸い寄せられるように、カイトは顔を近づけていき――。


「兄さまー! 今、戻ったよー!」


 響き渡った明るい声に思わずカイトとフィアはぱっと離れた。顔を上げると、翼をはためかせてローラが土塁を飛び越え、こちらに向かってくるところだった。

 中空で翼を消し、カイトの近くに着地するとその勢いのまま抱きついてくる。


「――っと……ローラも、よくやったな」


 ローラもフィアと同じように抱きしめ、丁寧に頭を撫でると、えへへぇ、と彼女は緩んだ顔を見せて笑った。尻尾をぶんぶんと振っているのが見えるようだ。

 フィアは少し離れた位置でまだ顔を火照らせていたが、やがてこほんと咳払いする。


「――ローラ、そのくらいにしてはどうですか」

「えー、姉さまも大分、兄さまに甘えていたじゃない?」

「……っ、見ていたのですか?」

「それは……ねぇ、周りのみんなも見ていたくらいだし」


 そう言いながらローラはカイトの腕の中で振り返り、視線を土塁に向ける。カイトとフィアがそこに視線を向ければ、物陰からキキーモラたちが顔を見せ、ゴーレムはのっそりと動いて土塁の修正を始めていた。

 その様子にフィアは顔を真っ赤にし、ローラはにやにやと笑みをこぼす。

 カイトはその仲間たちの反応に少しだけ苦笑をこぼし、手を叩いて告げる。


「さ、みんな――切り替えよう。今の内にダンジョン内の整備だ」


 外はまだ火炎が燃えており、外には出られないだろう。

 だからこそ、侵入者に荒らされた内部を修復しなければならない。その言葉に表情を切り替えたフィアやローラに視線を向け、小さく笑いかける。


「改めてご褒美は、その後だな――楽しみにしてくれ」

「はいっ」「うんっ」


 その声に嬉しそうに頷いた二人に目を細めると、カイトは土塁の方へと足を向けた。

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