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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第二章

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第6話 新たな戦術

「フィア、ローラ」


 カイトは鋭く二人の名を呼ぶと、口調で一大事と察したのだろう、二人は言い合いを止めて真剣な表情になる。


「侵入者ですか?」

「ああ、今確かめる――っと?」


 同時に頭の中に語り掛けてくる気配を感じ、眉を寄せる。左目を掌で覆って意識を集中させると、思念が送られてきた。


(これはシャドウウルフの――)

 意識を集中させれば、視界が拓ける。シャドウウルフの視界を通じて見えたのは、森の中を進んでいる五人の男女だ。ばらばらの装備をしており、手に持つ獲物も違う。

 ダンジョン内を周回しているシャドウウルフが見つけてくれたらしい。

 想像以上の優秀さに表情を綻ばせながら、フィアとローラを振り返った。


「五人だな。剣と盾と斧――あと弓と杖、かな」

「一人は魔術師なら、ここが察知されるのも時間の問題ですね。魔力の流れを見れば、地中にコアがあるのは丸見えですから」

「迎撃しないと、だね……っ」

「ああ。シャドウウルフが補足している――もう少し待ってくれ」


 カイトはフィアとローラに声を返しながら、シャドウウルフの視界で観察する。他のシャドウウルフも合流し、三方向から観察できる。


(装備は――軽装だな。金属製の固い装備はなさそうだ)


 ただ、その分、魔術か何かで補っている可能性は大きそうだ。

 武器も基本的にそれぞれ一つだけのように見える。だが、弓遣いだけは矢筒の他に何かを背負っている。布に包まれた長い物――。

 念話でシャドウウルフの微かな警戒心が伝わってくる。


(一体、何を持ち歩いているんだ……? 嫌な予感がするな……)


 カイトは少し考えてから、シャドウウルフたちに念話を繋げる。


『指示が出すまで察知されないように距離を取って観察――交戦は避けるように』


 その念話に三匹から応じる気配がある。一つ頷き、カイトは左目から手を外す。

 すでにフィアはキキーモラたちやレムにも合図を送っていた。キキーモラたちはキキを先頭にして整列し、レムは地中から顔を出してカイトを見ている。

 全員が、カイトの指示を待っているのだ。

 よし、とカイトは一つ頷き、全員に声を掛ける。


「侵入者は五名。今、西方から進んできている。これより迎撃に移る」

「了解しました。またこの陣地での迎撃でしょうか?」

「いや――」


 フィアの言葉に首を振り、カイトは目を細めながら言葉を続ける。


「入り口はほとんど完成している。そこを機能させてみよう。キキたちは洞窟入り口の所定の場所で待機。侵入者を待ち構えてくれ。レムは最終防衛線のここで待機。万が一の場合は投石で遅滞戦術を行う。よろしく頼む」


 そう告げると、キキたちは敬礼してすぐさま動き出す。レムも頷いて再び地面に中に沈んで行動を開始。カイトはフィアとローラに視線を向け、声を掛ける。


「最大戦力の二人は遊撃だ。状況に応じた行動をお願いすることになる。ひとまず洞窟の外で待機してもらっていいかな」

「……そうなると、カイト様を守るのはレム一人だけになりますが」


 フィアが懸念を口にするが、カイトは小さく笑って大丈夫だ、と答える。


「みんなが築き上げてくれた陣地なら、ここまで踏み入られたとしても少しは時間が稼ぐ。その間に二人を呼び戻せば何の心配もないよ」

「……そう、ですね。了解しました。カイト様」


 フィアは少し不安そうにしていたが、すぐに頷いてローラを振り返る。


「行きましょう。ローラ。手早く片付けましょう」

「うん、兄さまの元にすぐに戻るためにもね。ご褒美、期待しているから」


 ローラは片目を閉じて手を振り、フィアはカイトに向き直って一礼してからローラと共に駆け出す。その二人を見届けてからカイトは腕を組んだ。


(――さて、さて、どうなるかな)


 このダンジョンの地下洞窟はこの二か月で様変わりしている。

 カイトの歴史の知識を活用し、城砦の構造をふんだんに取り入れている。もちろんそれはこの土塁だけでなく、そこに通じる洞窟にも取り入れ、構造を変化させている。

 まるで、一個の城砦のような陣地。突破するのは容易じゃない。

 差し当たって、今回の防衛で大きな役割を果たすのは、洞窟の入り口――。


 いわゆる、虎口だ。


(虎口だけでも突破できたら、褒めてやるよ。侵入者共)


 不敵な笑みを浮かべながら、カイトは左目を掌で抑えてシャドウウルフたちに念話を繋ぎ、指示を出す。


「姿を敢えて見せ、距離を取りながら洞窟内に逃げ込むんだ――迂闊な侵入者たちを引き込むぞ」


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