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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第一章

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第14話 待望の仲間②

 フィアの悲鳴からしばらくして。

 カイトは石室の外で待っていると、扉が開いて中からフィア、ローラ、キキーモラのキキが出てくる。キキは敬礼し、身振り手振りで教えてくれる。


(最低限度の補修はしたけど、衣服はもう限界。新調をお薦めする――か)


 ありがとう、とキキに笑いかけると、彼女はぺこりと頭を垂れて去っていく。

 カイトが視線を戻すと、恥ずかしそうに視線を逸らしているフィアと、気まずそうに苦笑を浮かべているローラが目に入る。


「あはは……ごめんなさい。お姉さま。まさか、あんなボロボロを着ていると思っていなくて」

「ずっとあれを着まわしていたら、そうもなります……すみません、カイト様。大変なお目汚しを……」

「い、いや、僕も気を配っておけば良かった。すまない、フィア」


 三人全員がひとしきり謝り合うと、フィアはこほんと咳払いして話の流れを変える。


「と、ともかく――服の問題は後々どうにかするとして。カイト様、よくローラの召喚に成功しましたね。正直、びっくりしました」

「ああ。魔力は充分あったから、試してみたんだ」


 あの四人の侵入者が装備していた鎧は高品質だけあり、コアに捧げれば莫大な魔力を生み出してくれたのである。それらを全て使えば、火竜の召喚もできそうだった。


「でも、どうやってローラをピンポイントで召喚したんですか?」

「ああ、実はレムやキキを召喚しようとしたときなんだけど、そのときにすでにローラの気配を感じていたんだよ」


 コアを通じて魔獣に呼びかけたとき、遠くで呼応してくれる魔獣の気配を感じ取っていた。そのときは魔力が少なかったから断念していたが。

 思うと、そのとき意識していたのは『フィアと相性のいい魔獣』だった。

 それに気づき、カイトは豊富な魔力を活かして呼びかけたのである。


「フィアと一番相性がいい魔獣を召喚したい――それを意識したら強く応えてくれる魔獣がいたんだ。それを召喚して見たら、この通り」

「うんっ、私も姉さまのところに行きたい、と強く思ったら、引っ張り寄せてくれたの。えっと……お兄さま、でいいかな?」

「ああ、構わないよ。気軽に呼んでくれ」

「やった! ありがとう、カイト兄さま!」


 無邪気にローラはカイトに飛びついてくる。その頭を撫でてやると、彼女は目を細めて機嫌良さそうに笑み崩れる。


(――どうでもいいが、結構、大きいな、ローラの胸……)


 ふにゅん、と腕に包み込まれる感触が何とも言えない。

 女性と触れ合う機会が少なかっただけに、少しだけ視線が泳いでしまう。フィアがこほんと咳払いすると、ローラの肩を軽く叩いて言う。


「そこまでです。ローラ。カイト様が少し困っていますよ」

「あ、ごめんなさい、兄さま」

「い、いや、大丈夫だ。ただ、程々に頼むな。ローラ」

「はーいっ」


 ローラの声は元気いっぱいだ。フィアから無邪気な子だと聞いていたが、想像以上に溌溂とした性格らしい。フィアは仕方なさそうに笑い、ちら、とカイトに見やって囁く。


「――いずれにせよ、ありがとうございます。カイト様」

「……ん? 礼を言われることは何も」

「そうでしょうか? 私の言葉を聞いて、ローラを召喚してくださったのでは?」

「まぁ、それも一つの要因だけど。ただ、僕がそうしたいから、そうしただけだよ」


 これでフィアの笑顔を見られるなら、安いものだ。

 そう思いつつも口に出さずに軽く肩を竦めると、フィアは軽くくすりと笑って頷いた。


「そういうことにしておきます――とはいえ、カイト様」

「ん?」

「ローラの召喚で大分魔力、使ってしまいましたよね?」

「……まぁ、な。正直、侵入者撃退で手に入れた魔力は全部つぎ込んだ」


 つまり魔力はほとんどすっからかん。ダンジョンの改良に回せる魔力などは手元に残されていない状態だ。カイトの言葉にフィアは半眼を向けて告げる。


「それは後先考えなしでは?」

「……その言葉は甘んじて受けるよ。フィア」


 カイトが答えると、フィアが深くため息をこぼした。だが、すぐに顔を上げると小さく笑みをこぼして悪戯っぽく告げる。


「でも、安心しました。カイト様もそういう考えなしのところ、あるんですね」

「まぁな。ただ、みんなには迷惑をかける」

「構いませんよ。また頑張って魔力を集めていきましょう――できることは限られてきますけどね」


 フィアは苦笑交じりに告げると、ローラが少しだけ申し訳なさそうにもじもじしながらカイトとフィアに声を掛ける。


「その……私、もしかして迷惑だった?」

「いや、そんなことはないよ。ローラ。最初に比べれば、むしろ、魔力には余裕がある」

「はい、大丈夫です。ローラ。カイト様なら、何とかしてくれます」

「もちろん、ローラにもいろいろ手伝ってもらうからな」


 二人でローラの頭を撫でると、彼女は緩んだ笑みを浮かべる。その笑みを見ると、なんとなく庇護欲が湧いてくる。


(――妹とか娘って、こんな感じなんだろうな)


 目を細めて嬉しそうにするローラ、そしてそれを微笑ましく見守るフィア。

 二人の火竜姉妹を見つめ、カイトは目を細めながら告げる。


「二人とも、一緒に頑張ろう。楽しい、楽しいダンジョン暮らしのために」

「はいっ」

「もちろんっ」


 フィアとローラが元気よく応じる声が室内に小気味よく響き渡った。

これにて第一章は終幕。次から第二章になります。

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