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ダンジョン暮らしは火竜少女と共に  作者: アレセイア
第一章

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第13話 待望の仲間①

フィア視点

 翌日、フィアはカイトと共に忙しなく動いていた。

 何せ、侵入者の撃退でダンジョンの至るところが傷ついている。特にフィアがぶっ放したドラゴンブレスは洞窟の中を焦がすだけでなく、地面を吹っ飛ばしてしまったのだ。

 燃焼ガスの出口となった出入口付近の被害はひどく、大穴が空いてしまっている。


(……ひとまず、レムには補修をお願いしていますが)


 フィアは自分がしでかした惨状を眺め、ううむ、と眉を寄せる。

 辺りの土が吹き飛んだせいで、辺りは掘り返したように真新しい土が露出している。この状況で出入り口を隠蔽しても、不自然さが残ってしまうだろう。

 土をならしたり、倒木を配置しているレムは手を休めると、フィアに視線を向けてくる。

 これでいいのか――そう言いたげな視線に、フィアは少し考えてから頷いた。


「はい、ありがとうございます。ひとまずはこれで。この後どうするかはカイト様と協議して進めましょう。地下空洞に戻るので、隠蔽をお願いしていいですか?」


 その言葉にレムはこくりと頷く。フィアが洞窟の中に戻ると、レムは大きな手で板をそこに置いて隠蔽してくれる。その後に軽く土を掛ける音――。


(ひとまずは、これで当座はごまかすしかないですね)


 レムは地中を通れるので、こういうお願いができるのだ。フィアは一息つくと、光のない洞窟を歩いて地下空洞に戻っていく。

 松明が焚かれた地下空洞では、キキーモラたちが忙しなく動いていた。

 全員が籠を担ぎ、土塁に交じった石やボーラを拾っては籠に放り込んでいる。と、キキーモラのリーダー格の一人が気づき、手を振る。


「お疲れ様です。キキ。調子はどうですか?」


 その声にキキーモラはぴょんぴょんと飛び跳ね、順調だと教えてくれる。それにフィアが表情を緩ませると、キキーモラはさらに身振り手振りで何かを伝えてくれる。


「えっと……カイト様が奥で呼んでいる? 手が空いたら顔を出した方がいい……です、かね?」


 解読すると、キキーモラはこくこくと頷く。ありがとう、とフィアは手を振って礼を告げ、土塁をよじ登りながら苦笑をこぼす。


(カイト様ほどではありませんが、彼らの身振り手振りを理解できるようになってきましたね……仮面をつけて表情も変わらないのに)


 そう思いながら振り返り、作業するキキーモラを見やる。そのうちのリーダー格のキキーモラは分かりやすく、彫刻された木の仮面をつけている。

 それはカイトのお手製であり、彼が手慰みに作ったものだという。


『この子は一番働きがいいから、ご褒美に。名前も――そうだな、キキ、と呼んでいい?』


 カイトはそう言って手ずから授与したことで彼女、キキは非常に喜んでいた。それに触発され、他のキキーモラたちも褒美をもらうべく一生懸命働いている。


(カイトは魔獣遣いが上手いというか……私も褒めてくれないかな……)


 少しだけ期待しながら、フィアは土塁の奥にある洞窟に入る。それから奥に行く前に身だしなみを確認。服が乱れていないか確認して――ふと眉を寄せる。


(……もう服がボロボロですね……この服も)


 召喚されてからずっと来ているシャツとズボン。それらはカイトと暮らし始めてから酷使され続けている。キキーモラが加わってからは気を利かせて、彼らが細かく補修してくれている。だけど、それももう限界に近い。


(みっともない姿は見せたくないですが――こればかりは致し方ありませんね)


 ため息を一つつき、少し見栄えが良くなるようにしてから再び歩き出す。石室を目指すと、丁度カイトが部屋から出てくるところだった。


「お、丁度良かった。フィア」

「カイト様、お呼びだったようだったので」

「うん、手が空いたかな」

「はい、出入り口の修繕をしてきました。ただ、大分様子が変わってしまったので、後で見ていただいて対応をご相談したいのですが」

「ん、ありがとう。助かるよ、フィア」


 そう言ってカイトは手を伸ばし、大きな手でフィアの頭を撫でてくれる。


(えへへ……カイト様の手、優しい……)


 共に過ごすうちに、カイトはよく頭を撫でてくれるようになった。

 大きな手で優しく撫でられると、頭から背筋を通って甘い刺激が伝わるようで心地いい。今やフィアにとってカイトの撫ではお気に入りだった。


「そういえば、カイト様、何故私をお呼びで? 何か新しい仕事ですか?」

「ん、実は新しい仲間を召喚したんだ。その顔合わせをしようと思って」


 言われてみて気配を探れば、石室の中に気配がある。


(……また仲間が増えるんですね……)


 そうなると、カイトと過ごす時間が少し減ってしまうかもしれない。それを思うと少し寂しくなる。だが、それを表情に出さないようにし、にこりと笑みを返す。


「召喚されたのは、どんな子ですか? カイト様」

「うん、それはね……フィアが、よく知っている子だよ」


 おいで、と彼は振り返って奥に手招きする。その奥からふわりと金の髪が翻る。

 そして、目に入ってきたのは――懐かしい、少女の姿。


(……え……うそ……っ)


 フィアは思わず息を詰まらせ、自分の目を疑う。

 信じられない。その相手はまだ異世界にいて、召喚されていないはず。

 だけど、その彼女はカイトの傍に立ち、屈託のない笑顔で笑ってくれた。


「久しぶり。姉さま」


 その声にフィアは震える声を絞り出し、訊ねる。


「本当に……ローラ、なのですか……?」


「うんっ、召喚されてきたよ、フィアルマ姉さまっ!」


 その無邪気な声と共に、ぱっと駆け寄ってきた少女が、フィアに抱きついてくる。未だに信じられず、その背に手を回し――抱きしめて、確かめる。

 金髪のツインテール。くりくりとしたつぶらな瞳。自分の胸にはない――確かな、ふくよかな膨らみ。そして紛れもない、火竜独特の匂いと高い体温。

 間違いなく、フィアの妹であるローラだ。


「でも、どうして――」

「召喚したんだよ。ローラももうすでに、僕たちの仲間だ」


 カイトはそう言いながら安心づけるように笑いかけてくれる。

 その言葉にようやくじわじわと実感が胸に広がっていく。熱いものが込み上げてきて、目頭が熱くなる。その気持ちを込めてローラを強く抱きしめる。


「よかったです……ローラ……ローラ……」

「うんっ……! 姉さま、これからずっと一緒だよ……っ!」


 感極まったローラが、ぎゅっと力強くフィアを抱きしめる――。


 そのとき、フィアは久しぶりで忘れていた。

 火竜は力が強い。お互いに抱きしめ合ったとき、間に人が挟まっていればつぶれてしまうぐらいには、力が強いのだ。

 その状態でお互いに抱きしめられた結果――ボロボロだった服が、悲鳴を上げた。


 びり、とローラの手元で致命的な音が響き渡る。

 え、とローラが驚いて身体を離した瞬間――服が、限界を迎えた。

 はらはらと舞い散る、服の残骸。残ったのは肩に引っ掛かったわずかな布――そして、その傍に立っているのは、敬愛する主であるカイト。


「――あ……すまん、フィア」


 カイトが赤面しながら視線を逸らす。瞬間、フィアは我に返り――。


「いやあああああああああああ!」


 彼女の、凄まじい悲鳴がダンジョンの中に響き渡った。

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