表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/51

第5話 聖女、ついに働く(※三秒だけ)

朝――。

聖堂の鐘が鳴り響き、私はベッドの中で枕を抱きしめていた。


「……ねむ。」


昨日、“眠らぬ聖女”として称えられたばかりの私に、

さっそく新たな仕事(?)が舞い込んだらしい。


「聖女さま! 本日は王城にて、癒しの儀のご依頼が!」

「キャンセルで。」

「ダメです!」


ユウヒが勢いよくドアを開ける。

神官服の襟元までピシッと整っているのが腹立たしい。


「王族の方が直々にお呼びなのです!」

「寝てたのに……。」

「まどろみの奇跡をぜひ拝見したいとのことで!」

「私の寝顔を公開する儀式なの?」

「違います!」


うん、もうツッコミが追いつかない。


◇ ◇ ◇


数時間後、王城・謁見の間。


私は、超高級っぽいベッドに寝かされていた。

そう、王城内にベッドごと搬入されたのだ。


「このままお眠りください、聖女さま!」

「いや、せめてソファとか……」

「いけません! ベッドこそ神聖な場です!」


どうやら“聖女=寝る”という認識が完全に定着しているらしい。

……やばい、異世界に来てから寝てるだけで地位が上がってる。


壇上には王族らしき人物がずらり。

中央の王様(らしき人)が、興味深そうに私を見ていた。


「この者が“眠らぬ聖女”か。」

「は、はいっ! 世界を癒やす奇跡の御方でございます!」

ユウヒが胸を張る。

いや、だから寝てないんだって。


「では聖女よ、試しにこの兵の傷を癒せるか?」

前に進み出たのは、腕を押さえた騎士。

鎧がピカピカで、見るからに“今負傷しました感”を演出している。


(絶対に公開デモンストレーション用のケガだこれ。)


「さあ、聖女さま!」

「……寝ればいいの?」

「はい!」


ユウヒが満面の笑み。

周囲が息を呑む中、私は毛布をかけて目を閉じた。


――三秒後。


ピカーッ!!


まぶしい光が一閃し、空気が震える。

騎士の腕から、ぱっと傷跡が消えた。


「おおお……!」

「聖女さまが、三秒で癒された!」

「“三秒睡眠の奇跡”だ!」


「……いや寝てないけど。」


(というか、まだまばたきしかしてない。)


私は布団から上半身を起こし、苦笑する。


「えっと……完了?」

「はい! 完璧です!」

「じゃあ帰って寝ていい?」

「王都が歓喜してますので、あと少しだけ!」


◇ ◇ ◇


儀式後、王城の外は大騒ぎだった。

広場には人が集まり、口々にこう叫ぶ。


「聖女さまが眠らずに光を放たれた!」

「寝ないで癒すなんてすごい!」

「次は寝ながらでもお願いしたい!」


――もう、どっちだよ。


「聖女さま、皆が喜んでおります!」

「うん、よかったね。」

「今日も素晴らしいお働きでした!」

「三秒しか働いてないけどね。」


ユウヒはそんな私の言葉に、にっこり笑う。

「ですが、三秒で人を癒す方は他にいません。」

「それ褒めてるの?」

「もちろんです! 聖女さまは“最短勤務の神話”です!」

「なんかブラック企業の広告みたいな言い方しないで。」


◇ ◇ ◇


夜。

いつもの聖堂のベッドに戻った私は、毛布にくるまっていた。

今日一日で、なんか社会的評価が上がった気がする。

でも本人は全力で寝てただけ。


(これ……下手に動くより、寝てた方が国のためになるんじゃ?)


そんな怠惰な思考を浮かべながら、

私はゆっくりとまぶたを閉じた。


「お疲れ様でした、聖女さま。」

「……おやすみ、ユウヒくん。」

「明日も、いっぱい休んでくださいね。」


……もう完全に仕事=休息で定着している。

私は苦笑しながら、夢の中へと沈んでいった。


今日も、世界は静かで、少しだけ優しい。


次回予告


第6話 「聖女、労働拒否会議に参加する(自発的)」

――お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ