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第49話 聖女、新婚モード突入!?――“ぐうたら聖女、愛され妻への第一歩”

朝。

神殿のこたつの上に、湯気の立つ紅茶が置かれる。


「おはようございます、真由。」

「……んー……朝って概念、なに?」

「一日の始まりのことです。」

「じゃあ……今日は一日おやすみでいい?」

「だめです。」

「即答!?」


私は毛布にくるまり、こたつの奥へ逃げ込む。

ユウヒはその布団の端を、軽く持ち上げて覗き込んだ。


「……まるで新婚の朝みたいですね。」

「“みたい”じゃなくて、“ほぼ”でしょ。」

「ほぼ、ですか?」

「だって、昨日プロポーズされたし、指輪もあるし。」

「……確かに。」

「それに、こたつという家庭もある。」

「それは家庭に入りますか?」

「入る! むしろ基礎!」


ユウヒがくすっと笑う。

その笑顔を見てるだけで、心の中に小さな春が咲いた。


◇ ◇ ◇


朝食は、簡単なスープとパン。

……のはずが、私は完全に受け身モードだった。


「はい、どうぞ。」

「わぁ……ありがと。」

「こたつの中から出てきませんね。」

「新婚妻は家を守るの。こたつが家。」

「……守備範囲が狭い。」


それでも、ユウヒは文句ひとつ言わない。

スプーンまで差し出してくれる。


「はい、あーん。」

「いやいやいや、ちょっと!?」

「昨日から“婚約者”ですから。」

「そ、それとこれとは……」

「では、別の理由にします。聖女の体力維持のため。」

「言い換えても照れるんだってば!」


スプーンが口元に運ばれる。

素直に食べたら、スープがやさしい味でほっとした。


「……ねぇ、ユウヒ。」

「はい。」

「もしこのまま結婚したら、私どうなるんだろ。」

「どう、とは?」

「ぐうたらのまま一生を終える気がする。」

「いいと思います。」

「よくないでしょ!?」

「僕が働きますから。」

「……養われる宣言!?」

「愛の労働です。」

「やめて、響きが重い。」


◇ ◇ ◇


午前中の祈祷を終えて戻ると、

こたつの上に小さな花束が置かれていた。


「これ……?」

「市場で買いました。新婚祝いです。」

「……ちょっと、恥ずかしいけど嬉しいな。」


花は淡いピンクの小花で、香りはやわらかい。

私は思わず顔を埋めて、小さく笑った。


「ねぇ、ユウヒ。」

「はい。」

「こういうの、ずっと続くと思う?」

「続けます。」

「……即答だね。」

「永遠に、こたつがある限り。」

「……名言っぽいけど、地味だなぁ。」


◇ ◇ ◇


午後。

ふたりでこたつに潜り、帳簿の確認をしているふりをしながら――

私は半分寝ていた。


「真由、寝てますね?」

「ね、寝てない……」

「目が閉じてます。」

「目を閉じてるだけ。こたつの精霊と交信中……」

「それ、睡眠です。」

「信仰の一種……」

「寝てます。」


そんなやり取りのあと、ふと彼が囁く。


「……真由。」

「ん。」

「こうして隣で過ごせるのが、何よりの幸福です。」

「……ユウヒ、それ言うの何回目?」

「数えきれません。」

「そっか。じゃあ、私も言っとこ。」


私は目を閉じたまま、こたつの中で彼の手を探す。

指先が触れ、軽く握る。


「……私も、君といる時間が一番好き。」

「真由……」

「だから、お願い。ずっと一緒にいようね。」

「ええ。約束します。」


こたつの中で、ふたりの指がきゅっと絡まる。

その温もりが、未来の約束より確かに感じられた。


◇ ◇ ◇


夜。

外では雪がまた降り始めていた。

私は毛布にくるまりながら、ユウヒに言う。


「ねぇ、もし結婚式とか挙げるなら、こたつ型の祭壇がいいな。」

「……それ、神殿長が卒倒します。」

「いや、絶対あったかいって。」

「真由は本気で言ってますね。」

「本気だよ。こたつは正義。」


彼は苦笑して、そっと私の髪を撫でた。


「……じゃあ、その時は僕が誓います。」

「なにを?」

「“このこたつを、一生守り抜く”と。」

「ふふ……なら私も言う。“一生ぬくもりを維持する”ってね。」


二人の笑い声が、雪の降る夜に溶けていった。

それはまるで――

聖女と神官の、新婚祈願。


次回予告


最終話 「聖女、初めてのケンカ!?――“ぐうたら妻と過保護夫のすれ違い日記”」

――お楽しみに!

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