表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/51

第46話 聖女、デート決行!――“ぐうたら聖女、恋人と街へ行く”

朝。

神殿のこたつから、私の声が響いた。


「――よし、今日はデートする。」


「えっ!? いきなり!?」

「昨日の夜、決めてたの。神殿こもりすぎは健康によくない。」

「……まあ、それは確かに。」

「というわけで、今日は“恋人健康増進日”です。」

「名称のクセが強い……!」


◇ ◇ ◇


街へ出るのは久しぶり。

冬の王都は、空気が冷たくてきらきらしていた。

私は厚手のマントに身を包み、

ユウヒと並んで歩いた。


「うわぁ……ひさびさの街!」

「本当に楽しそうですね、真由さん。」

「うん、だってね、こたつ以外の景色を見るの久しぶりだよ。」

「それ、引きこもりの台詞ですよ!?」

「ぐうたらのプロは引きこもりの延長線上にいるの。」

「……聖女の新定義が更新されましたね。」


通りの露店には、

焼き菓子、香草茶、花冠――

冬なのに温かい色であふれていた。


「ユウヒくん、あれ見て!」

「キャンディですか?」

「そう、あれ。“恋結び飴”って書いてある!」

「……恋結び?」

「恋人同士で食べると、心が離れなくなるんだって。」

「……神殿で販売したら儲かりそうですね。」

「やめなさい。信仰をビジネスにする気!?」

「いえ、聖女経済活性化です。」

「どっちにしろアウト。」


私は笑いながら、飴を二つ買った。


「ほら、片方あげる。」

「ありがとうございます。」

「ねぇ、同時に食べよ?」

「えっ!? あ、はい!」


ぱり、と飴が砕ける音。

ほのかなハチミツの味が広がった。


「どう? 甘い?」

「……はい。幸せの味です。」

「……もう、そういうの慣れてないってば……」


◇ ◇ ◇


昼。

街の喫茶店でお茶休憩。


「うわ~、この椅子ふかふか。」

「こたつと比べてどうですか?」

「こたつの勝ち。」

「ですよね……。」


私は頬杖をついて、紅茶を一口。

窓の外には、雪がちらちらと舞っている。


「ねぇ、ユウヒくん。」

「はい。」

「こうして外に出るのも悪くないね。」

「そうですね。真由さんが楽しそうで、僕も嬉しいです。」


「……君、ほんとずるいよね。」

「えっ?」

「そんなこと言われたら、こたつより離れたくなくなるじゃん。」

「僕は、真由さんがどこにいても、

 その場所を“こたつ”にします。」

「……っ! うまいこと言ったな!?」

「本心です。」

「うまいこと言った上に本心とか反則……!」


◇ ◇ ◇


午後。

市場を歩いていると、露店の老婦人が声をかけてきた。


「おや、仲の良いこと。お二人さん、恋人かい?」

「はい、そうです。」(即答)

「ちょっ!? 即答すぎ!」

「若いっていいねぇ。お嬢さん、幸せそうな顔してるよ。」

「そ、そんなこと……!」

「ほんとにいい顔してるわ。愛されてる人の顔だよ。」


……そんなふうに言われると、

なんか泣きそうになるじゃん。


◇ ◇ ◇


帰り道。

夕陽が金色に街を染めていた。


「ねぇ、ユウヒくん。」

「はい。」

「楽しかったね。」

「はい。今日という日を、一生忘れません。」

「おおげさだなぁ。」

「本気ですよ。」


少し沈黙。

私はそっと彼の腕に手を回した。


「ねぇ、ユウヒくん。」

「はい。」

「……またデートしよ。」

「ええ、もちろんです。」

「次はどこ行く?」

「……こたつの隣。」

「それもう家デート!」


二人で笑う。

その笑い声が、雪空にやわらかく溶けていった。


◇ ◇ ◇


夜。

神殿に戻り、こたつに沈み込む。


「……結論。外も悪くないけど、

 やっぱり家が一番。」

「予想してました。」

「でも、君と一緒なら、どこでもいいかも。」

「……真由さん。」


ユウヒは照れたように笑い、

私の頭をやさしく撫でた。


――今日もまた、世界が少しあたたかくなる音がした。


次回予告


第47話 「聖女、こたつで告白される!?――“恋人たちの夜と永遠のぬくもり”」

――お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ