表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/51

第44話 聖女、恋の副作用――“仕事にならない甘すぎ生活”

朝。

こたつの中。


「……ねぇ、ユウヒくん。」

「はい、真由さん。」

「今日、何曜日?」

「……火の曜日です。」

「ってことは……休日?」

「いえ、勤務日です。」

「だよね……うん、わかってた。」


私は布団に潜ったまま、うめいた。


「……出たくない。」

「わかります。」

「……でも君が言うと説得力ある。」

「いえ、僕はお仕えする身ですから。」

「でも、こたつに一緒に入ってるよね。」

「それは……信仰活動の一環です。」

「便利な言葉だなぁ、“信仰活動”。」


……完全に、私と同類だと思う。


◇ ◇ ◇


神殿の廊下では今日も噂が飛び交っていた。


「聖女さまとユウヒ様、また寝坊されたらしい……」

「“愛の奇跡”で時間が止まるんだって!」

「こたつが聖域化してるんだよ!」


……実際、その通りだった。


「ほら、仕事行こ?」

「……はい。行く前に、お守りの儀式を。」

「お守り?」

「出勤前の“おでこキス”です。」

「……だんだん儀式が増えてるね?」

「信仰は進化しますから。」


ちゅ。


「……はい、今日も加護完了です。」

「……やばい、行く前に体力使った。」


◇ ◇ ◇


午前中の祈祷。


聖女席に座る私。

隣に立つユウヒ。


……が、ふたりの距離がやたら近い。


「ユウヒくん、もうちょっと離れて。」

「いえ、警護のためです。」

「顔近い。」

「信仰のためです。」

「息あたってる。」

「……愛の加護です。」

「……反論できないのが悔しい。」


信徒たちの視線がそわそわと揺れている。

これ、もう完全に聖堂ラブコメ現場だ。


◇ ◇ ◇


昼休み。


「ねぇユウヒくん。」

「はい。」

「“恋の副作用”って知ってる?」

「いえ、初耳です。」

「仕事に集中できない、

 考えるたびに顔が浮かぶ、

 気づいたら微笑んでる――」

「……まるで僕のことですね。」

「……そう、私も同じ。」


二人の視線が重なる。

見つめ合って笑い、同時に顔をそらした。


「……副作用、重症だね。」

「治療法はありますか?」

「うん。午後サボる。」

「だめです!」


◇ ◇ ◇


午後。


聖堂の会議。

神官たちが真剣な顔で報告をしている中、

私はこっそりユウヒに小声で囁いた。


「ねぇ、退屈。」

「しっ。今、聖堂の予算の話を……」

「こたつの新調費用とか入ってる?」

「……いえ、さすがにそれは……」

「じゃあ聞かなくていいや。」

「そういうわけには!」


……あ、今絶対“やる気スイッチ寝てる”って思われた。

(というか、実際寝かせてるけど。)


でも会議の最後――神殿長が言った。


「……こたつの聖具化は予算に組み込む。」

「えっ!?」

「神々もあの温もりに感銘を受けられたそうだ。」

「まさかの上層部公認!?」


「ほら見た、言ったでしょ。」

「ま、真由さん……すごいです……!」

「愛の勝利ってやつ。」


◇ ◇ ◇


夜。


こたつに戻って、ふたりで並んで紅茶を飲む。


「今日もいっぱい“副作用”出てたね。」

「はい。ほぼ仕事できませんでした。」

「でも、世界がちょっと幸せならいいよね。」

「……そうですね。」


「ねぇ、ユウヒくん。」

「はい。」

「恋って、ほんとに万能薬かも。」

「……それ、また新しい信仰ですか?」

「うん。“恋愛療法”。」

「……信じます。」


二人の笑い声が、こたつの熱と一緒に広がっていく。

外の雪が舞っていても、

この部屋だけは春のように暖かかった。


次回予告


第45話 「聖女、恋人になって初めての嫉妬――“可愛い独占欲とすれ違い”」

――お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ