表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/51

第43話 聖女、恋の奇跡を起こす――“祈りよりもキスの方が効く!?”

神殿の朝は、今日もざわついていた。


「聖女さまの“キス”で風邪が治ったらしい!」

「えっ、それ本当!?」

「神の加護より即効らしいぞ!」

「わたしも祝福されたい~~!!」


……というわけで、

神殿の廊下には“聖女キス希望者”の行列ができていた。


「……なにこれ。」

「新しい信仰が誕生しましたね。」

「どうしてそうなるの!?」

「昨日のあの出来事が、噂になっているようで……」


◇ ◇ ◇


事の発端は、昨日の夜。


ユウヒが書類整理中、指を紙で切った。

ほんの少しの傷。

けれど真由は反射的に、彼の手を取って――


「痛くない?」

「平気です。すぐ治ります。」

「……治れ。」


ぺた、と軽く唇を当てた。


「っ!? ま、真由さん!?」

「……よし、これで完治。」

「そ、そんな……! 急に……!」


そして本当に、傷はすぐに消えたのだ。


「……え、うそ。冗談のつもりだったのに。」

「聖女のキスに、癒しの奇跡が……?」

「……え、ええぇ……!?」


◇ ◇ ◇


その“偶然の奇跡”が翌朝には神殿全体に伝わっていた。

人の口に戸は立てられない。

――特に恋バナが絡むと尚更だ。


「真由さん、どうしますか……?」

「どうしようもないね。」

「希望者、すでに三十人超えです。」

「いや多っ!?」

「皆さん、“キスで風邪を治したい”と……」

「もう薬局いけよ!?」


◇ ◇ ◇


結局、こたつの間で緊急対応会議が開かれた。


「つまり、私のキスが“治癒の儀式”扱いされてるわけね。」

「はい。ですが、聖女の力が“愛情と共鳴する”という解釈も……」

「要するに、“恋が薬”ってこと?」

「……はい。神学的にも、間違ってはいません。」

「いやいやいや……! 間違ってる方向で合ってるやつだよそれ!」


ユウヒは困ったように笑った。


「……でも、僕は信じていますよ。」

「え?」

「真由さんの“想い”が、本当に誰かを癒せる力を持ってるって。」

「……もう、そういうこと言うと……」

「……?」

「実験、したくなるじゃん。」


「っ!?」


真由は身を乗り出し、ユウヒの頬にそっと触れた。


「じゃあ、次の奇跡、見せてあげる。」


唇が触れる。

一瞬の静寂。

風鈴が、やわらかく鳴った。


「……どう? なんか変化あった?」

「え、えっと……胸が……熱いです……!」

「それ恋の症状です。」

「奇跡じゃないんですか!?」

「奇跡でもあるけど、たぶん恋の副作用。」


真由はくすくす笑って、彼の手を握った。


「ねぇ、ユウヒくん。」

「はい。」

「“愛で癒す”って、悪くないね。」

「……はい。とても、素敵です。」


◇ ◇ ◇


その日の午後。


「聖女さまが恋人に“癒しの口づけ”を授けた!」

「あぁ……愛こそ最大の奇跡……!」

「神殿中がときめきに包まれている……!」


もはや信仰というより恋愛祭りだった。

でも、そんな中で真由は思う。


――もしこの想いが、誰かの心をあたためるなら。

――それも“聖女の奇跡”なんだろうな。


◇ ◇ ◇


夜。


「……ねぇ、ユウヒくん。」

「はい。」

「次に“奇跡”が起きたらさ。」

「はい。」

「ちゃんと“ご褒美”くれる?」

「……ご褒美?」

「うん。“おやすみのキス”とか。」

「っ……そ、それはその……!」

「じゃあ、私が先にしちゃうね。」


言葉より早く、唇が重なった。


雪の音が静かに溶ける。

それは、夜に灯るもうひとつの奇跡。


次回予告


第44話 「聖女、恋の副作用――“仕事にならない甘すぎ生活”」

――お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ